800万人が現代の奴隷に
インドでは、およそ800万人の人々が、さまざまな形態の「現代の奴隷(Modern Slavery)」の被害にあっていると考えられています※。かものはしでは、2012年の活動当初から2017年までは、その中でも特に「商業的性的搾取を目的とした人身売買」の問題を解決するため、そして2018年以降は労働搾取を目的とした人身取引にも焦点をあてて、主に2つの事業を通してこれらの問題解決を支援してきました。
トラフィッカーが適切に処罰されることが極めて難しい
2012年にインドにおける性的搾取を目的とした人身売買状況の調査を進めていく中で、州をまたいで女性やこどもたちが被害にあっていること、その最大のルートは西ベンガル州からマハラシュトラ州間(距離にすると1600km)であることが分かりました。
インドにおける人身売買が解決されない大きな理由は、州をまたいだ連携が、政府機関及びNGO間でないこと、そしてトラフィッカー(被害者を誘拐して売春宿に売り飛ばす人)が有罪判決にならずに「野放し」になっていることだと、支援開始直後の調査でわかりました。国土の広いインドは連邦制国家のため各州の権限が強く、被害者が州をまたいで売られた場合、州政府同士、異なる州の警察同士の連携が困難であり、捜査が適切に行われません。また裁判プロセスも長期化するため、トラフィッカーが適切に処罰されることが極めて難しい現状があります。また、被害者が正義を求め、裁判で闘おうとしても、女性やその家族が、加害者からの脅しや嫌がらせにあうことも少なくありません。このような状況から、被害者にとって正義や尊厳を回復するために、システム的課題が大きいのです。
※参照:“Respond-Solve-Evolve”, Sattva Consulting, 2021