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【日本事業】困った時に「助けて」と言える社会に向けて~妊婦向け座談会実施レポート~

date2023.5.10

こんにちは、いつも温かい応援をありがとうございます。

かものはしプロジェクト日本事業部の草薙です。

 

かものはしプロジェクトでは、2019年から日本国内での活動をスタートしました。

子どもが虐待されない、そして虐待された経験がある人が回復できる社会をつくるために、日本事業部では「誰もが生まれてきて良かったと思える社会をともにつくる」というミッションを掲げて活動をしています。

 

photo by shutterstock

児童虐待はなぜ起きてしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、親や家庭が抱える多様な困難が複合的に絡み合って発生しています。虐待に至りやすいリスク要因として、ひとり親家庭・若年出産・親の精神疾患・経済的貧困等の要因があります。

しかし、これらの要因が一つでもあれば虐待が発生するわけではありません。

私たちは、これらの困難さを親や親族が自分の力だけでなんとかしようと抱え込むことによって虐待が発生すると考え、社会の中で誰かに助けを求められるような豊かな「つながり」を育むことで、児童虐待を予防し、そして虐待を受けた人も回復できる社会を目指しています。

 

今回は日本事業部の活動の1つである妊産婦支援事業で実施をした妊婦向け座談会についてレポートします。 

 

■児童虐待の予防で、なぜ妊産婦支援か? 

 

皆さんは「0歳0日」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

日本における子どもの虐待死は0歳児が圧倒的に多く、厚生労働省が発表する2020年4月~2021年3月の間での児童虐待死亡事例(※1)では、49人のうち、実に32人(全体の65%)が生まれて1年以内の0歳児の子どもであり、32人のうちの8人(全体の16%)が「0歳0日」、生まれてすぐの命なのです。

※1:厚生労働省:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)

 

また、特定妊婦(※2)と呼ばれる、特に支援が必要と認められる妊婦の子どもは被虐待リスクが高い傾向があること等から、虐待を「予防」するために妊産婦支援の重要性が分かってきています。

私たちが暮らす社会には、出産以前から様々な困難(経済的困難、精神的不安定、予期せぬ妊娠やDVなどの複雑な事情等)を抱えているにも関わらず、頼れる家族がいない、行政に助けを求められない等の理由で社会から孤立してしまい、助けが必要な妊娠期・産後期を安心安全に過ごせない女性たちがいます。

※2:出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦。具体的には、不安定な就労等収入基盤が安定しないことや家族構成が複雑、親の知的・精神的障害などで育児困難が予測される等のケースがある。

 

そのように女性たちが孤立して困難を抱えてしまうことは本人だけの問題かというと、そうではないと私たちは考えています。

その背景にある妊娠をしたのは自分の責任、頼れる人がいないのは周りとの関係性を作ってこなかった自分の責任というような「助けて」と言いづらい自己責任論や、女性はこうあるべき、母親はこうあるべきという、あるべき論等の社会がもつ生きづらさ・孤立を生み出す環境に問題の本質があると考えています。

その生きづらさ・孤立を生み出す環境の改善を目指して、妊産婦支援を実施しています。

 

児童虐待の予防と、回復できる社会を目指す日本事業部のメンバー 

 

■妊婦の「声」を聴くための座談会 

妊産婦支援をしていく上でまずは担当者自身が妊婦と関わり、当事者の声を聴く必要性を感じていたので、最初のステップとして、「妊娠」というテーマで困っていることや心配なことを話し合う妊婦向け座談会を実施しました。

私たちの活動エリアである千葉県松戸市の市民スペースでお茶やお菓子を準備して安心して話せる環境を意識した場を作りました。


告知に使用したチラシ。ピンクをベースにして参加しやすさを意識しました。

 

2023年3月に2回の座談会を実施し、合計で3名の妊婦の方とお話することができました。

時間は60分を予定していましたが、後半になるにつれて話も盛り上がり、時間を延長して心配なことや、出産にむけて準備をした方が良いこと等を話しました。

 

参加された方の意外な共通点としては、全員松戸市に引っ越してきたばかりで、そもそもその土地のことを詳しくご存じではありませんでした。 

妊婦への情報提供LINEや産後の居場所、出産お祝いプレゼント等、松戸市にお住まいの方に向けた制度や利用できるサービスを伝えると、次々に質問が出て会話が弾みました。

 

最終的には連絡先を交換する等、参加者同士の交流も盛り上がりました。

私たちが大事にしている「つながり」が、小さくても確かに生まれつつあり、手応えを感じることができました。

座談会の様子。松戸市の制度やサービスの紹介もしました

 

■相手の立場で考える、想像してみる

 

座談会を実施してみて感じたことは、社会的に孤立した妊婦でなくても、少しでも社会的なつながりが欠けると窮地に立たされてしまう可能性があるということです。

 

例えば、一見問題がなさそうに見える家庭でも、

 

「引っ越してきたばかりで周りに助けを求められる人がいない」

「育休を取っているけど、復帰ができるか心配でそのことが頭から離れない」

「パートナーが外国籍で地域に馴染んでいけるか心配」

 

などの悩みを抱えていることがあります。このような悩みを抱える方は本当に一部の方のみでしょうか。私たちは、誰にでも起こりうることだと考えています。

さらに、これらの悩みが2つ、3つ同時に妊娠期に重なってくると身動きが取れなくなる人がいても不思議ではありません。

 

「妊娠」は新しい命が産まれるという喜びである一方で、その変化が不安につながることもあると思います。

特にはじめての妊娠だと先が見えない不安があり、そんな中でも更に、特定妊婦と認定される方は「パートナーがいなくなった」「親族から出産への同意を得られない」「お金がない」というような状況が重なってきます。

そのような状況下で育児が難しい立場になってしまう人は、なかなか自ら「助けて」と声をあげるのも難しく、誰にも相談できないという状態に追い込まれてしまいます。

 


■困った時に「助けて」と言える社会

 

私たちは、そのような生きづらさを抱える人にも寄り添える社会を作りたいと考えています。

 

ちょっと困った時に「助けて」と言える、頼れる人が周りにいる社会。

 

座談会にご参加いただいた妊婦の方々のお話を聞いて、困ったという「声」をちゃんと受け止めていける、そんな社会を目指していきたい、と改めて思いました。


そのためにまずは、松戸市の孤立しがちな妊産婦に向けての居場所を作り、そこで自治体や支援団体と妊産婦を繋ぎ、つながりやサポートを得られる体制を作ることを考えています。

居場所作りに関しては現在は企画段階なので、その過程をブログを通じてご支援いただいている皆さまにもお伝えしたいと思っています。

 

また2023年5~7月にかけても妊婦向け座談会を実施する予定です。

 


5-7月でも座談会を実施して、妊婦の方々の声を聴いていきます

 

妊婦の方でご興味ある方は是非ご参加ください!

お申込フォームはこちら

 

今後も当事者の方々の声を聴いて、その声を大切にしながら事業を作っていきます。良い報告ができるようにこれからも活動をして参りますので、引き続きかものはしプロジェクトをどうぞよろしくお願いいたします。

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