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date2024.12.16
writer樋山 真希子
「支援する・される」の関係を超えて、目の前にいる「あの子」に届けたい。 NPO法人さんま・石川さんへのインタビュー
2024年にオープンしたばかりの妊産婦の居場所事業「ふたやすみ」は、同地域で活動するNPO法人さんまとかものはしの共同運営です。今回は、NPO法人さんまの代表理事・石川さんに、さんま立ち上げのきっかけ、活動を続ける原動力やなどを聞かせていただきました。
contents
自己紹介
こんにちは!石川靜枝といいます。結婚して千葉県の松戸市に引っ越してきてから30数年間、松戸とのつながりを持っています。今はNPO法人さんまの代表理事としての活動や、かものはしプロジェクトと一緒に「ふたやすみ」を運営しています。
NPO法人さんまの活動
こどもの居場所づくりや子育て家庭のサポート事業などを行っています。「遊びを通して生きる力を育んでいくこと」を軸に、さまざまな活動を展開しています。また、松戸市からの委託でこども館(児童館)の運営、自主事業でこども食堂である「さんま食堂」の運営も行っています。それぞれの活動を通じて、個別に子育て家庭と個別に繋がり、一人親家庭の支援や、子育て家庭のサポートを実施しています。
立ち上げのきっかけ、活動を続ける原動力
子育ての「もやもや」がきっかけでした。私は出産ギリギリまで働いていたのですが、出産後に仕事をやめたんです。よく聞く話ですが、「話し相手が赤ちゃんしかいない」とか「社会から取り残されたように感じる」といった状況に陥りました。
そんなときに、松戸の市民講座を見つけたんです。ジェンダーフリーや家制度について学ぶ講座で一時保育もありました。よく覚えているのは、「保育園のスリッパの色が男の子は水色で、女の子はピンク色。それってどうなんですかね?」という話。その時に、自分のなかでモヤモヤしていたことにぼんやりだけど気づくというきっかけをもらいました。
その講座の仲間とともに、子育て支援の団体を立ち上げ、一方でそこで出会った数人で一時保育のサークルを立ち上げました。この活動を通じて、「生きづらさ」を抱える子どもや家庭との関わりが増え、一人ひとりともっと深く関わりたいという思いが強くなりました。もう一歩踏み出そうと決意し、さんまを立ち上げました。
活動のなかでの喜びや葛藤
シンプルに、さんまとつながることでお母さんの笑顔、こどもの笑顔が増えるのを見ることがとても大きな喜びです。
「お母さん、やっと安心して眠れるね」「あ〜今日はお肉をたくさん食べられてよかった」など、関わっているなかでぽろっと言ってくれる言葉に「ああ、よかった」と胸がいっぱいになります。「お肉をたくさん食べられてよかった」という言葉は、意外と「お肉」だけのことじゃなくて、良い意味での氷山の一角。こどもも親も安心して自分を出せる、打ち解けていく様子をみるときに、関われてよかったなと続けるエネルギーになっています。
ただ、活動のなかで、どうにもこうにもできないことってこんなに沢山あるんだな…と打ちひしがれるときもあります。経済的困窮世帯の方にお米や食材を届けたりするのですが、そもそもそこが問題ではなかったりするんですよね、では、その家庭にお金をポンと渡したらそれが解決するのかといったら、そうじゃない。
そんな中で私が考えるのは、どうにもならないことを受け入れ、目の前の課題の解決をしながら、ともに人生を豊かにしていく仲間としてどう関わっていけるのか、ということなんです。
わたしたちが関わることで本当に家族の人生が豊かになるのか、この関わり方で本当に良いのか?と日々葛藤しています。
活動の中で大切にしていること
「自分の目で確かめて、関わる」ということを大事にしています。あとは、相手にちゃんと合わせること、どう「ともに」歩んでいくかという視点、スピード感も大事。気をつけていることは、ご本人の意思を尊重するということ。ただ、尊重するだけではなくて、対等に意見を言える関係性をつくっていきたいと思っています。「支援する・支援される」の関係性ではなくて、一緒に人生を歩む社会の一員。最終的にはそういう関わりができれば良いなと思っています。
私はいま、お米を提供できる立場にあるけれど、私自身が誰かに助けてもらう立場になることもあると思っています。「対等な関係性」という部分がかものはしと共有できるところ、元々お互いが大切に持っていた価値観だと感じています。
かものはしと共同事業を行うことにした理由や決め手
現場で起きていることを自分の目で確かめて関わることを大切にしていますが、こどもに関わる問題の解決を考えるときに、それだけでは難しいということを痛感しています。現場の日常も大切、でも社会自体を変えることも大切。その葛藤を抱えながら活動をしていました。
そんななかで、ご縁があってかものはしと関わることができ、現場も社会もどちらも大切という価値観、「支援する・される」ではなく、「ともに歩む」という思いも同じで、共感しあえると思いました。
私の「なんとかしたい」思い
本当にいろんな家庭のこどもたちと関わることが多いのですが、どれ一つとして、同じ家族、課題はありません。そう思ったときに、虐待予防や将来のことも考えながら事業をしなきゃいけないと感じます。
でも、目の前に出会ったこどもたち、今を生きるこどもたちをなんとかしたい。そのこどもたちに対して、届けたい。未来の部分もあるけど、目の前のこどもたちに届くべきものがあまりにもたくさんの障害があって、届かない。
目の前にいる、顔が浮かぶ「あの子」に届けたい!って思うんです。時々、ネットワークなどで支援などを考えていきましょうという会議があるのですが、ついつい、今この考えている時間、あの子のために使いたいなと思っちゃうんですよね。
writer
樋山 真希子ソーシャルコミュニケーション事業部
小さい時から「平和ってなんだろう?」と考えていました。中学生のときにNPOの存在を知って以来、ずっとNPO職員に憧れを抱いていました。大学生の時に観た「闇の子供たち」という映画が忘れられず、人身売買問題に真っ直ぐに向き合うかものはしに感銘し、2016年に入職しました。現在は広報と会員コミュニケーションを担当しています。知らない街の町中華に行くことと、ハムスターの飼育にはまっています。