4
date2024.10.04
writer樋山 真希子
Forではなく、Withを大切にしたいインド事業部・スシュミタへのインタビュー
「なんとかしたい」という思いが集まってできたかものはしプロジェクト。一人一人のその思いが社会を変える大きな力となっています。今回はインド事業メンバーのSusmitha(スシュミタ)より、インドでの取り組みと活動に携わる思いについてお伝えします。
インドの「人身売買問題」とかものはしの取り組み
私たちは2012年からインドでの「人身売買」をなくすために、現地のパートナー団体とともにこの問題に取り組んでいます。
①リーダーシップネクスト事業
サバイバー(※)に寄り添い、リーダーとしての成長をサポートする事業
②タフティーシュ事業
人身売買の被害にあった人たちが正義と権利を取り戻せるよう、社会の仕組みを変える事業(裁判支援、政策関与など)
今回メッセージをもらったスシュミタは、リーダーシップネクスト事業のリサーチリードとして活動しています。
※私たちは人身売買の被害を生き抜いた当事者のことを敬意をもって「サバイバー」と呼んでいます。
Forではなく、Withを大切にしたい
私は大学生時代、スラムのこどもたちに、日常生活に必要なスキルを教えたり、一緒に遊ぶボランティアをしていました。活動の中で、こどもたちが少しずつですが希望や自信を持つようになって変化していく姿を見ることに喜びを感じました。
一方で大きな疑問も沸きました。
「インドでは社会福祉制度や多くのNGOがあり、貧しい人々や社会的に困難を抱えているコミュニティに対する取り組みがなされているにも関わらず、これらの問題に大きな変化が起きず、なぜ良い進展が見られないのか?」という問いでした。
別のボランティア団体でも活動をしましたが、そこはサービスを提供するという姿勢で、ボランティア団体は「提供者」であり、当事者は「受け手」であるという在り方で、大きな違和感を覚えました。
その時に、「”あなたのためにしている”ではなく、”あなたと一緒にやる”という、”For(〜のために)”ではなく”With(〜とともに)”の姿勢で活動したいんだ」という自分の気持ちに気がつきました。
私のかものはしでの役割
社会人になり、かものはしプロジェクトに関わるまで、人身売買についてはニュースでの出来事として見聞きする以外、ほとんど何も知りませんでした。
かものはしが「当事者の声を真ん中に置く」ことを大切にする組織であり、人々の正義と尊厳を守ることに取り組んでいることがとても印象的でした。
また、かものはしの理念と、私自身が学んできたこと、経験してきたこととの繋がりも感じられたことから、一緒に活動することを決めました。
私は今、リサーチリーダーとして、パートナー団体やサバイバーリーダーグループが取り組んでいる各プロジェクト(※)の進捗のモニタリングを担当しています。
※人身売買や児童婚についての啓発活動や被害者支援など、サバイバーリーダーたちがそれぞれ決めたテーマで活動しています
活動の喜びと葛藤
パートナー団体への定期的なモニタリングの訪問の中で、事業の進捗を聞き、それがパートナー団体やサバイバーリーダーのリーダーシップ形成にどう活かされているのかを感じられることがすごく嬉しいです。
あるモニタリングの時に、サバイバーリーダーたちが、「モニタリングで話を聴いてもらっている時は、精神的にも肉体的にも、完全に今この場所に集中することができて、いつも頭の中を駆け巡っている心配事や苦しみから解放される。だから、何も心配することなく、ただ喜びを感じることができる」と言ってくれたことがありました。
大きな喜びを感じたと同時に、彼女たちが、話を聴いてくれる人、ただ一緒にいてくれる人、ありのままの自分を否定しない人を必要としていることを実感しました。
一方で、人身売買のサバイバーであることは、まだまだ多くのリスクが伴います。サバイバーリーダーグループのなかには、他に生きる選択肢がないために現在もセックスワーカーとして働いているメンバーもいます。
私たちは彼女たちが安全な環境で活動ができるように細心の注意を配る必要があり、緊張感をもちながらサポートしています。
私の「なんとかしたい」思い
私は、サバイバーの尊厳が大切にされ、享受されるべき自由と権利を楽しむこと、自ら意思決定ができること、成長できることを目指して、彼女たちとともに活動をしています。
サバイバーに関わる困難を防げなかったときに、悲しくなり無力感を感じることもあります。また同じことが起こったらどうしようと不安に感じることもあります。しかし、かものはしで働くなかで、私自身も成長し、サバイバーとともに働く力を得ました。
サバイバーの「変化」を間近で見る者として、彼女たちが自分と他者、そして社会の未来のために尽力する姿を支えることにとてもわくわくしています。
writer
樋山 真希子ソーシャルコミュニケーション事業部
小さい時から「平和ってなんだろう?」と考えていました。中学生のときにNPOの存在を知って以来、ずっとNPO職員に憧れを抱いていました。大学生の時に観た「闇の子供たち」という映画が忘れられず、人身売買問題に真っ直ぐに向き合うかものはしに感銘し、2016年に入職しました。現在は広報と会員コミュニケーションを担当しています。知らない街の町中華に行くことと、ハムスターの飼育にはまっています。