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なんとかしたい「あなた」と「わたし」をつなぐ

あなたとわたし通信You & I News letter

#6

date2024.10.06

writer石濱 千夏

tag#インタビュー

妊産婦支援の現場から日本事業部・石濱へのインタビュー

2024年にオープンしたばかりの「ふたやすみ」の立ち上げから今まで、一つ一つ向き合い、走ってきた現場責任者の石濱。彼女が活動に取り組む原点、これまでふたやすみの活動や利用者さんとの関わりの中で見えてきた、大切にしたいことなどを語ってくれました。

自己紹介

はじめまして、石濱です。2022年にかものはしプロジェクトに入職し、現在は妊産婦支援事業「ふたやすみ」の現場責任者として働いています。

かものはしの妊産婦支援事業では、2024年1月にNPO法人さんまと共同で、困りごとを抱える妊産婦のための居場所「ふたやすみ」を千葉県松戸市にオープンしました。

現在、私は現場責任者として、運営管理を担当しています。

児童虐待に取り組もうと思った原点

私がかものはしで児童虐待に取り組む原点は、産後の経験にあります。

低出生体重児だった娘が、母乳やミルクをうまく飲めず、体重が増えずに病院や保健所から体重指導を受けていた頃のことです。

正直、指導者からは虐待を疑われているように感じる時もあり、また母乳を拒否する娘からも母親と認められていないように感じ、不安と孤独におおわれていました。

そんな状況を変えるきっかけをくれたのが、行政の家事支援として来てくれたカネコさんでした。

コロナ禍で、久々の来客だったカネコさん。家に入るやいなや「わー、可愛い」と娘を抱き上げてくれました。

ごく当たり前の光景なのですが、そのとき私は「赤ん坊を可愛いと感じて良いのだ」と気付き、張り詰めていた糸が切れて、泣いていました。

「つながり」を持っているか、持っていないか

私のこの経験は、「児童虐待は子育てのすぐ隣にあって、誰もがその可能性を持っている」と捉えるようになったきっかけでもありました。

そして、虐待に至るかどうかは、そうさせないだけの「つながり」があるかどうかにかかっていると思っています。

そのつながりとは、カネコさんのような人かもしれないし、近所のやさしい眼差しや、傍観しない社会をつくる一人一人なのかもしれません。

だからこそ、妊産婦支援事業で立ち上げた居場所の「ふたやすみ」は、多くの困難を生き抜く妊産婦さんと、共に未来に向かって踏み出せるような場所でありたいと思っています。

今ふたやすみでは、宿泊、訪問、日中の居場所の3つの関わりを通じて、さまざまな困難や事情を抱える妊産婦さんに寄り添い、活動をしています。

なかには、パートナーのDVを受けながら日々の生活や子育てを送る方、経済困窮下にあり明日の食べ物が必要な方、家庭内での暴力や傷つきを受けて育ってきた方、日常生活や養育、人間関係の苦手があってそれが生きにくさにつながっている方などがいます。

そんな彼女たちを「ふたやすみが支えるんだ」と意気込んで、事業をスタートさせました。

ところが半年間彼女たちと関わるなかで私たちが見たのは、はたから見れば難しい局面に置かれていても、それを家族で笑い飛ばす強さや、「こんなことなんでもないよ」と跳ね返す根性、そしていろいろな事が起きながらも日々大きくなり育っていくこどもたちの生命力でした。

スタッフが手作りの料理を作っています

私自身が、彼女たちから学んだことがあります。それは、ふたやすみの活動は、「困難を持つ”脆弱な”妊産婦を支える」ことではないということです。

むしろ、人生をしなやかに生き抜き、頑張り続けている彼女たちが、一人でなんとかしようと奮闘して疲れきってしまったり、妊娠出産子育ての苦難が重なったときに、エネルギーを回復できるような存在になることなのではないか。

そのなかで、自分も大切な存在だと思い出したり、一人ではないことを実感しながら、また前を向いて人生の旅に踏み出していくことを、そばで応援することなのではないか、そんな風に考えています。

そして、彼女たちの自分に対する愛情が、その先で、こどもたちへのやわらかい眼差しや余裕につながるのだと思っています。

妊産婦事業部メンバーと(石濱・左から2番目)

ふたやすみの先を見据えて

事業立ち上げからこれまで、ふたやすみは奔走してきました。

「私たちのサポートは、この利用者さんにとって良いことなのだろうか」「私たちはどうあるべきか」「この方の願いは何だろうか」

日々の一つ一つの選択に迷い、チームで議論しながら進めてきましたが、ときには後悔をすることも、力不足を実感することもあります。

それでも、利用者さんのその方らしさが垣間見える瞬間や、前に向かうエネルギーを感じるときがあり、私自身はそういった場面に支えられています。

例えば、最初にお会いしたときには絶望の淵にいるように表情のなかった方が、徐々に表情が戻り、笑顔がみられるようになったとき。

「一人じゃできない」と言っていた育児にスタッフが同行するうちに、同行頻度が減り、スタッフがついていけないくらいの勢いで一人でできるようになったとき。

私たちのあり方を模索する日々ではありますが、「ふたやすみ」の先に利用者さんの願う人生があることを、さらにその先にこどもたちの未来があることを、引き続き志向していきます。この活動を支えてくださる皆さまのご支援に感謝申し上げます。

writer

石濱 千夏妊産婦支援事業部

大学院で国際保健を学び、青年海外協力隊や開発コンサルタント、ソーシャルビジネスのコンサルタント等を経て、2022年に入職しました。現在は妊産婦の居場所事業の運営を担当しています。山とボルダリングが好きで、家族でボルダリングジムに通っています。娘がもう少し大きくなったら一緒にリードクライミングをすることが最近の目標です。