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「誰も取り残さない教室」が教えてくれたこと カンボジア・かものはしから独立したSALASUSUの現場から

date2024.10.24

こんにちは、いつもあたたかい応援をありがとうございます。
ソーシャルコミュニケーション事業部の古橋です。

皆さんは、かものはしの活動が実はカンボジアから始まったと知っていましたか?
この夏、かものはしとしては6年ぶりにカンボジアへ出張しました。今回は、かものはしから独立後のカンボジア事業(現・SALASUSU)の「今」を、現場へ行って見えたこと・感じたことからお伝えします。

かものはしプロジェクトのはじまりの場所 カンボジア

かものはしプロジェクトは「こどもがだまされて売られてしまう問題」を根本的になくすために、2002年、当時大学生だった村田、青木、本木が、カンボジアで活動を始めました。
2007年には、アンコールワット遺跡があるシェムリアップ州の農村に、雑貨を作る工房であり、「生きる力」を身につける学校でもある「コミュニティファクトリー」を立ち上げました。村に仕事を作り、女性が自分たちの村から通って働くことのできる職場を作ることで、売られる危険をなくし、家族が出稼ぎに出なくても生活できることを目指しました。また、警察訓練や孤児院支援など活動を広げました。

さまざまな関係者の努力の末に、2015年ごろには、カンボジアでは「こどもがだまされて売られてしまう問題」は、ほぼないと言える状態にまでになりました。その後、カンボジア事業は2018年にかものはしから独立し、現在はSALASUSUとして活動しています。

(詳細は、こちらの記事でもご紹介しています。
かものはし20年の歴史を 振り返って | 特集レポート

かものはしからの独立後 カンボジアの今 経済発展と共に広がっていく「学びの格差」〜

現在SALASUSUは、2008年から最貧困層の人々に提供してきた教育で培ったノウハウを活かして、日本の教育専門家等と連携し、2021年から貧困と諦めの連鎖を止める「誰も取り残されない教室」をカンボジア全土に広げるため公教育改革に取り組んでいます。

青木(写真左から2番目)村の女性たちも一緒に学ぶ

カンボジアの公教育の課題について、SALASUSU 理事長の青木健太はこう話します。

カンボジアの公教育は近年大きく改善していて、多くのこどもたちが学校へ通えるようになりました。2000年に34%だった小学校修了率は2022年には87%を超えているという調査もあります。ただ、教育の質が高いとは言えません。10歳時点で必要な読み書きと文章の理解ができるこどもはわずか10%となっています。

教育の課題は量から質へとうつり「学校は卒業できる。しかし学んでいない」という大きな課題として残されています。特に、貧困層のこどもたちが通う公立校の授業は、教師が一方的に話すスタイルが多く、学習のペースが違うこどもたちの中で、「学びの格差」がどんどん開いていっています。その結果、進路選択の機会が限られ、貧困から抜け出せなくなるいう状況が起こっています
(詳細は、こちらの記事でもご紹介しています。
貧困と諦めの連鎖を断ち切るために、”学びの格差”の解消を。| SALASUSU

「誰も取り残さない教室」先生は教えるのではなく、生徒たちが学べているかを観察する

かものはしから独立後、SALASUSUが運営をしている「コミュニティファクトリー」は、2023年に16年目を迎え、「工房」から「学校」へと生まれ変わりました。よりよい学校づくりを研究するための実験を目的として開かれた学校です。現在はプレオープン期間として、近隣に住む小学4~6年生と、貧困層家庭出身の女性たちが共に学んでいます。そこでは「誰も取り残さない教室」を目指して、新しいスタイルを取り入れた授業が行われています。

私たちは、算数の授業を見学させてもらい、その見慣れない教室の姿にとても驚きました。
教室といえば、先生の方を向いて机と椅子が並び、先生が黒板に授業の内容を書き、生徒がそれをノートにとっていくイメージがあると思います。しかし、ここの教室の生徒は4人ほどの班に分かれて座っています。

4人の班で取り組む様子

先生が最初に問題を提示するのですが、4人が協働して問題を解くのではなく、4人それぞれがまずは自分で取り組み、わからないことがあれば周りの生徒に自分で聞く。先生は生徒たちの様子をつぶさに観察し、必要に応じてフォローする、というスタイルでした。

先生はそれぞれの生徒が学べているかを熱心に観察している

なぜこのような授業スタイルをとっているのか、校長の後藤愛美はこう話します。

誰も取り残さない教室にするためには、学習のペースが違う全てのこどもを取り残さないことが重要です。同じ課題に取り組むこどもたちがお互いに学び合えるように班をつくり、時に聞きあいながら進めます。また、先生は教えることではなく、生徒たちが学べているかを観察することに集中してもらっています。

後藤(左から3番目)校長として、教師と共に授業研究にも取り組む

確かに、自分の学習ペースが尊重される教室には、生徒同士の学び合いや先生への質問などで溢れており、学びに向けた活気をとても感じたのを覚えています。

遠く感じる社会課題も、知り、体験すると自分が無関係でないことに気づく

今回の出張では、近隣の公立小学校や農村などさまざまな場所を訪問する中で、上記のSALASUSUの運営する「学校(旧コミュニティファクトリー)」と公立小学校との違いが印象に残りました。遠いと思っていたカンボジアの公教育の課題が、自分の記憶とリンクしていくのを感じたのです。

シェムリアップ州・SALASUSUの学校近隣の公立小学校にて、授業を見学させていただきました。

私は日本の中学や高校で、成績はいつも300人中下から30番以内でした。教えるスピードについていけず、学ぶことの楽しさがわからない私は、常にぼーっとしているか、漫然とノートをとっているだけ。教室で先生から教わって学ぶことの苦手意識が拭えず、教室の外で自習に励む日々でした。

「カンボジアの学びの格差の課題は日本の教室でも起こっている。そして自分もその当事者だった。」ということにはっと気づいたとき、何か肩の荷が下りたような、自分を受容できたような不思議な感覚になりました。教室の学びのペースについていけなかった過去の自分を無意識に責めている自分を、時を経て少し許せたのだろうと思います。

そこからは、カンボジアの公教育の課題が、より自分ごととして捉えられるようになり、自分にも何かできることはないだろうかと考えるようになりました。

遠く感じる社会課題も、知り、体験すると自分が無関係でないことに気づく。
それにより世の中を見るまなざしや行動が少しずつ変わっていく。

今回の出張を通じて、これが社会を変える一歩目なんだと気づかせてもらいました。

今回の出張メンバーで語り合う様子。筆者・古橋(一番左手前)

また、8月の出張後には、かものはしプロジェクトとSALASUSU合同で、オンラインツアーを行いました。シェムリアップの街や農村の様子や、「工房」から「学校」へと生まれ変わったSALASUSUの活動を、学校へ通う女性へのインタビュー中継なども交えて、たっぷりお伝えしました。
オンラインツアーへ参加したサポーター会員の方からは、

児童買春問題を解決した後もカンボジアで公的教育水準の問題にとりかかっていることなど、一貫した論理や理由だけにとらわれず、目の前の課題にひたむきに対峙してきた経緯を見ると、自分もまずは気になることから始めようという気持ちになる。

というメッセージをいただき、「今」のカンボジアとつながる時間となりました。

かものはしプロジェクトとSALASUSUは、現在、それぞれが異なる道を歩んでいますが、根底にある「こどもたちの未来のために」という想いは同じです。今後も、両団体が培ってきた知識や経験を共有し、互いに学び合うことで、より大きな成果を生み出せるように取り組んでいければと思います。

引き続き、かものはしプロジェクトとSALASUSUをどうぞよろしくお願いいたします。

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SALASUSU(サラスースー)はカンボジアで公教育改革に取り組む日本の認定NPO法人です。 | Blog

いぐさ製品の生産も規模は縮小しましたが、「学校」のカリキュラムの一つとして継続しています。

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