【アフターケア事業】つらいも よかったも いっしょに を体現する全国ネットワーク「えんじゅ」全国大会@福岡の活動報告
date2025.1.24
writer金井 宏之
こんにちは、アフターケア事業部の金井です。
アフターケア事業では、2024年から親や家族に頼ることができない人たちをサポートする団体の全国ネットワーク「えんじゅ」の事務局を担い、社会的養護の経験がある方や、困難な状況にある人たちへの活動を進めています。(※)
えんじゅの事業は、調査研究、研修、政策提言、広報の4つがありますが、今回はその中の一つである研修事業の全国大会についてご報告します。
※「えんじゅ」の事務局を担うことになった経緯はこちらから
contents
全国の加盟団体が一堂に会す 年に一度の全国大会
2024年10月4日から5日まで、えんじゅ設立から7回目となる全国大会が福岡県で開催されました。北海道から沖縄まで、親や家族に頼ることができない人たちをサポートをする団体の職員が、総勢104名参加しました!(対面64名、オンライン40名)
全国大会は、対人支援に必要な知識や制度を学ぶだけでなく、加盟団体が一堂に会し、支援に関する情報や活動への思い、課題を持ち寄ることで、お互いに元気をもらい、励まし合う場ともなっています。
今大会も、虐待を受けた人たちの困難や痛みに最前線で向き合い続けるスタッフの皆さんが「参加して良かった、元気になれた」と思ってもらえる場にするために、私たちは企画の準備や当日の運営に取り組みました。
つらいも よかったも いっしょに
全国大会の初日には、えんじゅの未来を考えるために、事務局とえんじゅの理事で検討してきた新しいキャッチフレーズ「つらいも よかったも いっしょに」を発表しました。
困難を抱えた人たちが地域で安心して暮らせるように、そしてそれをサポートする人たちにとっても「えんじゅがあってよかった」「ひとりぼっちじゃない」と思ってもらえる存在になりたいという願いが込められています。
1日目 仲間から学びあう
基調講演では、NPO法人抱樸の代表である奥田さんに、これまで支援の現場で感じてきたことや考えをお話いただきました。36年間にわたり現場で支援を続けている奥田さんの言葉一つ一つに、会場の参加者は熱心に耳を傾けていました。
また、現場で長年活動をされている奥田さんならではの話に質問が次々と寄せられました。特に印象的だったのは、「他の支援機関(行政、民間団体、NPOなど)とどのように連携していくか?」という質問に対しての奥田さんの回答でした。
結局は人との連携が大事。全国にどれだけ知り合いがいるか、この問題ならあの人に相談しよう、役所のあの人なら動いてくれるかもと、人の顔が浮かぶかどうかなんです。事を動かすのは機関ではなく、結局は人なんですよ。
えんじゅの全国大会は、まさにそんな「人の顔が浮かぶ」つながりを作る場なんだ、と事務局としても改めてこの大会の意義を実感しました。
その後、パネルディスカッションやテーマ別のグループワークを行いました。普段は離れた場所でそれぞれ活動しているからこそ、葛藤や迷いを抱えながらもともに歩む仲間の存在や、そこからの学びが活動をより豊かにしていくことを実感した1日目でした。
<参加者からの声>
基調講演やグループワークで他の方の考えや経験を聴くことは、とても良いリフレッシュになりました。日常業務に追われていると、無力感や社会や相談者に対して苛立ちを感じてしまうこともありますが、そうした“よごれ”を、あたたかいシャワーで洗い流してもらい、また頑張ろうと思うことが出来ました。
2日目 現場での課題を共有し、全国ネットワークとして協働していく
2日目はこれからのえんじゅに、具体的にどんな活動があるとよいかについてグループで話し合いました。
<出てきたテーマ>
・制度改正による支援対象者の拡大
・若者の就職・転職をどうしていくか
・住居を契約する際の保証人をどうするか
・えんじゅで実施したい研修や勉強会
・支援者のケアなど
特に興味・関心が高かったのは「制度改正による支援対象者の拡大」で、約15名のメンバーが参加しました。背景としては、令和4年の児童福祉法改正により、「措置解除者等又はこれに類する者」として制度の対象者が社会的養護の経験者だけでなく、虐待に苦しみながらも保護されなかった人たちにも広がったことがあります。支援対象者が広がることは喜ばしい一方で、現場の受け入れ体制などはまだまだ整っていないのが現状です。
「もし一度に100人来た場合はどうする?」など、具体的な悩みを共有しアイデアを交換し合っていました。
<参加者からの声>
新しい制度が現場の実態に合わない場合もあり、現場の声を吸い上げてもらう必要性を感じています。また、制度利用で成功したモデルケースがあると、取り組んでみようという気持ちになれます。地方にいると、前例がないことに対して不安を抱くことも少なくありません。そのため、えんじゅの事務局でこれからも新しい情報や成功事例をまとめてもらったり、現場の声を吸い上げてもらえると非常に助かります。
これからのえんじゅ 〜「つらいも よかったも いっしょに」を体現する場
「全国の仲間が、日常から離れ、自分をいたわり、元気になれる大会」を目指して、事務局として初めて運営した全国大会。2日間全力で取り組みました。
この大会で大切にしたことは、「つながる場」をつくることでした。真剣に学び、議論をした後に食事を共にし、語り合う。中には日付が変わるころまで残り、仲間と語り合っていた参加者もいます。(私もその一人でした。)
加盟団体の皆さんは、こども時代に安心や安全を感じられず、傷ついた経験を持った人たちと向き合っています。彼らに全力で関わるなかで、「どうしたら良いのか」とスタッフ自身が悩み、途方にくれることも少なくありません。だからこそ、つらい時はつらい、よかった時はよかった、と素直に言える仲間とのつながりが必要です。今回の全国大会はまさに、「つらいも よかったも いっしょに」を体現する場であったと感じています。
「一人じゃない」と思えるときに、また立ち上がることができます。
皆さんにとって「自分は一人じゃない」と思えるのはどんな時ですか?
全国ネットワーク「えんじゅ」は、困難な状況にある人たちが地域で安心して生きることができるように、支援者同士のつながりを大切にしながら、現場のリアルな声を社会に届けるネットワークでありたいと考えています。
writer
金井 宏之アフターケア事業部
児童福祉に携わりたいと思い、社会福祉士を取得し、地方公共団体の児童相談所やこども家庭支援部門のケースワーカーとして働いてきました。制度で解決できない課題に対して、市民活動団体が力を発揮している姿を目の当たりにし、NPOへの関心が高まる中でかものはしの日本事業の存在を知り、2022年に入職しました。マラソンでサブ4を目指していますが、達成にはまだ時間がかかりそうです。