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カンボジア人と働く上で忘れてはいけない本当に大切なこと

date2013.10.31

「こんなことを言ったら、
 あなたに絶望されてしまうかもしれないけど、
 私、転職が決まりました」

カンボジアでの突然の出来事。
あるミーティングでのカンボジア人営業マネジャーのこの突然の告白に、
僕は頭が真っ白になった。
一瞬ののち、平静を装いながら、彼女の話を聞いた。
彼女は何度も「この組織が好き」「何の不満もない」と繰り返しながらも、
「世界有数のNGOへ挑戦する」
つまり、新しい職場で新たな一歩を踏み出す、
ということを強い決意を持って話してくれた。
3年間ずっと共に格闘しながら営業を伸ばし、
組織にいつも笑顔をもたらしてくれていた彼女からの告白だった。
もう2ヶ月くらい前のことだが、やっと整理ができたので、
今ブログに綴っている。
「本当にあと3年以上は、かものはしで働くつもりだった」
「でもまさか叶うと思っていなかった、
 クリスチャンとして働けるNGOへの就職という夢が、そこにある」
「また新たなチャレンジ、新たな経験をしたい」

それを聞きながら、率直に言って、僕は「裏切られた」とか、
「この人だけは絶対にすぐに辞めないと思っていたのに」という
自分勝手な気持ちを抑えるのに、必死だった。
「なぜこんな急な辞め方をするんだろう」という怒りとか、
「どうせ辞めるなら、今まで本当に2人で時間を尽くして議論したり、
トレーニングしたのは一体なんだったんだろう」という悲しみに、
支配されそうになった。
しかし、同時に「あ、これはもう引き留めても無駄だな」とも思ったのだ。
そして、僕は平静を装いながら
「辞めてしまうのはショックだけど、君の新しいチャレンジを応援する」
と何とか伝え、逃げるようにしてミーティングルームを後にした。

カンボジア人が職場に求めるもの

今回の退職について、まさに寝耳に水で仰天してしまった。
しかし、よくよく考えてみると、
僕自身カンボジアで働き始めて5年目になっており、
その間も本当に多くのカンボジア人スタッフとの出会いや別れがあった。
短ければ数ヶ月、長くても2〜3年でスタッフが辞めることは、
別に珍しいことではない。
もちろん5年以上働いているスタッフもいるが、多くのカンボジア人は、
「給与」「新しい経験」「トレーニング」などの様々な理由を挙げ、
転職していった。
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特にカンボジアに来て最初に驚いたのが、
「3年以上も同じ職場の同じ肩書きにいては、良い経験が出来ない。
それ以上は続けるべきではない。」

と考えているカンボジア人が多かったことである。
実際の 「仕事の中身・仕事環境の変化」というよりも、
「肩書き」「スキル」を気にするということに対し、
最初は新鮮で驚きだった。
さすがに、よく1年以内で辞めているような履歴書では
カンボジア人にも好かれないが、
「経験」という言葉で、軽々と組織を飛び越えていくカンボジア人たちを最初は理解できなかった。
ここ2年ほど、退職者が少なかったので、
すっかり忘れていたこの苦々しい感覚。
正直、油断していたというところだろうか。
しかし、1日経って改めて考えてみた時、自分の心に湧き上がってきたのは
1. 彼女が夢をつかんだというのは、本当に喜ばしいこと
2. 彼女が成長し、またカンボジアの人のために、
 その力を発揮しようとしている。
 その成長に関われたのは、かものはしが、そして僕自身が、
 カンボジアのために貢献できたということでもある。

という思いだった。
こういうと「ええかっこしい」な感じだが、そう思うことで
自分の気持ちに整理をつけたかったのかもしれない。

「あなたは本当に良いリーダーだった」

同時期に辞める財務担当のスタッフがいたのと、
着任するインターン生がいたため、
急遽その週に、歓送迎会としてバーベキューを開くことになった。
そして、そのバーベキューは、
僕にとって一生忘れられないものになったのだ。
なぜなら、営業マネジャーの女性が号泣してしまったこと、
その営業マネジャーとずっと一緒に仕事をしていたインターン生も
同じく号泣していたこと、それもある。
しかし、どうしても忘れがたいのは、退職する財務担当スタッフに、
入り口に呼び出されて言われた次の言葉だった。
「私はこれまで3つのNGOや企業を経験してきたが、
健太はその中でも本当に良いリーダーだった。
かものはしはいつも何に対しても意識が高くて、
明るくて、前向きで良い職場だった。

またいつか、かものはしで働きたいと思っている。
僕は事情があって辞めるけど、これは本当の気持ちだ。」

どれくらい真実だったかはわからない。
でも、スタッフが辞めるということで、
どうしても自分の責任や限界を感じて自分を責めていた僕は、
その言葉に色々なものを抑えることができなくなってしまった。
その後、会場を後にした僕は、
一人でバイクに乗りながら号泣してしまったのだ。
後にも先にもバイクを運転しながら、
あんなにも嗚咽をもらして泣くことはないと思う。
自分のやってきたことが間違ってきたわけではない。
前向きな気持ちを持って働いてくれていたし、
他のスタッフもそう思ってくれている。
もちろん自分や組織の限界があって、人が離れていくことはあっても、
1つずつ改善していけばいいじゃないか。

カンボジア人と働く上で大切な3つのこと

9月18日、営業マネジャーだった彼女から、
既存スタッフに対しての最終プレゼンがあった。
ちなみに、かものはしでは、辞める人による最終プレゼン(組織に対する
「改善指摘」付き。そして、結構耳が痛いことも言ってくれる)
それに加え、退職者インタビューを実施している。
またもや号泣してしまい、
あまりきちんとプレゼンができなかった彼女だが、
だからこそ彼女がスタッフを愛して、そして、スタッフが
彼女を愛していたことが再確認できた本当に素敵な時間だった。
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今回のこと、そして今までのことを振り返り、
最後に3つのことを今後の戒めとしてまとめておきたいと思う。
1. 一緒にいた時間の中で、
 少しでもそのスタッフが成長できたのであれば、例えその人が辞めても、
 それはカンボジアの人のためになっているのだという
「信念」と「覚悟」を持つこと。
 その気持ちは、異なる国籍の人であっても絶対に通じるということ。
2. みんなが新しい環境、キャリアにチャレンジできるような、
 「向上心」や「志」を持てる職場を作ること。
 そして同時に、1人の人が辞めたからといって、
 決して傾くことのない強い組織を作ること。

3. 泣きながらバイクに乗るのは危ないので、一旦止めてから泣きましょう。

特に2つ目の点については、今コミュニティファクトリー事業が
「自立化・現地化」として取り組んでいる方向とも一致する。
関わる人が成長できる・愛される組織にしていくと同時に、
人の入れ替わりにも揺らがない力強い組織にしていくことで、
持続的にカンボジアに根付く事業にしていくことができると
考えているからだ。
そのためには、哲学・行動規範の浸透、ガバナンスの見直し、
業務の一層のマニュアル化、トレーニングの充実などの
進めて行かなくてはいけないことが、山積みだ。
僕はこの組織でしっかりとそれらを進めて行く決意を新たにしたのだった。
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そして本当に最後にもう一つ。
みんなの新天地での活躍を心から祈っている。

MAO_6316.JPGライター紹介:青木 健太
共同代表の一人。コミュニティファクトリーの運営をはじめ、カンボジア事業を統括。かものはしを立ち上げ、IT事業の統括を経てカンボジアへ。一児の父。

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