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『働いて兄弟のビジネスを支えたい』辛い状況を乗り越えて家族のために働く1人の工房スタッフの物語

date2014.6.27

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こんにちは、カンボジア駐在インターン中の石渡菜奈子です。
いつも楽しそうに一生懸命働いている女性たち。
コミュニティファクトリーにいくといつも笑顔で
「ななっこ、スオスダイ!」
と迎えてくれ、何度救われたか知れません。
そんな彼女たちにも、実は様々なストーリーがあります。
今回はファクトリーで働く一人の女性について、
じっくりお伝えしたいと思います。

生い立ち

彼女の名前は、チャンナ。
選別の工程で今年1月から働いています。
少し恥ずかしがり屋で、写真を撮るよーと声をかけても、
後ろで静かに微笑んでいる控えめな女の子です。
7人兄弟の末っ子です。
(※プライバシー保護のため名前は仮のものを使用しております)
彼女のお母さんは彼女が1、2歳の時に亡くなり、
その後お父さんは新しい妻を持って、家を出ていってしまいました。
残された7人の兄弟には、頼れる人はおらず、自分たちの力で生活をしました。
農閑期には村の中で食べるものを集めて、一日一日を過ごしていました。
その日食べるものを見つけるのがやっとのことだったそうです。
農繁期には村の中で人手の足りないおうちを回って、稲刈りの仕事をしていたものの、
お給料を貰えることはほとんどなく、いつもお米を渡されました。
明日はお金を渡すよ、と言われ、次の日仕事に行くとまた、
「明日こそお金を渡すよ」と言われる、そんな日々が続いていたと言います。
当然食べ物を買うお金はなく、
ほとんどの日は一日に一回しかご飯を食べられませんでした。
その食事も、仕事をして貰った少しのお米を、
兄弟で分け合って食べるという状態だったそうです。
『本当に苦しい生活だった』と彼女はぼそっとした小さい声で話してくれました。
彼女が10代半ばになった頃、さらに辛い出来事が兄弟を襲いました。
お兄さんには知的障害があり、閉鎖的な農村では受け入れられず、村の人に殺されたのです。
お姉さんはそんな辛い状況に耐えられず、静かに自らの生涯を閉じたのでした。

かものはしとの出会い

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そんなとき、その状況を不憫に思った隣人が、
村に張ってあったかものはしプロジェクトの募集要項を見つけて、
働くことを強く勧めてくれたのでした。
通常コミュニティファクトリーでは、少しでも多くの家庭を助ける為に、
一家庭につき一人を雇うことにしています。
しかし、かものはしは彼女の家庭状況を考慮し、彼女と一つ上のお姉さん二人を雇用しています。
働き始めたときを振り返り、彼女は言います。
『毎日安定して雇用してくれると聞いて本当にびっくりした。
それまでは、契約をすることなしに日雇いで働いていて、
毎日その日のことを考えるので精一杯だった。
あと、識字教室があると聞いたとき、嬉しかった。
私は小学2年生までしか学校に行っていないから。
クメール語で名前が書けるようになったんです。まだ読むのも書くのも難しいけれど。』
ファクトリーで働く女性たちのほとんどは、学校を途中で辞めています。
義務教育は無料ですが、様々な備品を買うことができなかったり、
勉強よりも仕事を優先させなければならない状況だったりするためです。
読み書き能力が低いと、内容が分からない契約書にサインさせられ、
騙されて売られてしまうという危険性が高くなります。
自分でしっかり判断して自分の人生を歩むことができるように、
識字教室を始めとするライフスキルトレーニングがなされているのです。

ファクトリーでの仕事

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彼女とお姉さんは、お給料は全て、家族のために使っていると言います。
かものはしで働き始めたことによる一つの大きな変化は、
きちんと毎日3食ご飯を食べることができるようになったことです。
お洋服やバッテリー式の電気、飼育用の鳥も買うことができ、生活が少し楽になりました。
現在、彼女はお姉さん夫婦とその子ども4人、計7人で暮らしています。
しかし、お兄さん夫婦は遠いところへ田んぼの仕事をしに行くことが多く、
月に一回しか帰って来ないので、子どもたちの面倒は彼女が見ています。
学校へ行く年齢になった姪は、きちんと学校に通うことができています。
『ファクトリーでの仕事は楽しいよ!』と彼女は言います。
ここでは沢山の友達に会え、クメール語の勉強ができ、毎月きちんとお給料も貰えます。
『私は選別の工程で働いています。マット面が綺麗に仕上がるように、
色々な太さのい草を3種類に分けています。
長い時間細かい違いを見分けるので、時々目が痛くなるのが大変なところ!』
そう、笑って教えてくれました。
彼女はこの先もずっとかものはしのファクトリーで働きたいそうです。
また、現実的な話として他に働く場所はないのです。
かものはしで働くことが出来なくなったら、また辛い生活に戻ってしまう。
かものはしはこの地区のセーフティネットのような役割を果たしています。
彼女の次の目標を聞くと
『毎月少しずつ貯めているお金で豚を買い、兄弟が養豚ビジネスをできるようにすること』
だと言います。
どんなに厳しい状況でも分け合う心を忘れない、そして、
辛い過去を抱えながらも力強く未来を見据える彼女を、心から応援したいと思います。

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