よりよい生活習慣のために~歯みがきトレーニングを実施しました~
date2014.9.16
「はい、では口を開いてくださいねー」
ちょっと恥ずかしそうにしながら、
日本人の歯科医の先生に歯のチェックをしてもらうコミュニティファクトリーの女性たち。
こんにちは、カンボジア事業部の亀山です。
この日、ファクトリーで初めて、
歯科健診・歯磨きトレーニングを行いました。
今回の健診・トレーニングを提供してくださったのは
日本人の歯科医の方が立ち上げられた、NPO「カムカム クメール」さんです。
※カムカムクメールさんについてはこちら!カンボジアの子どもの虫歯予防のために活動されています。
今日は、ファクトリーで働く女性達が健康に生活できるようになればとの想いから実施された
歯磨きトレーニングについて紹介します。
実施の背景と農村の現状
農村に暮らす女性たちには、歯を磨く習慣がないわけではないものの、
1日朝1回のみだったり、良い歯ブラシがなかったり。
磨いていてもちゃんとしたトレーニングを受けたこともないので、磨く方法も自己流です。
また農村にはほとんど歯医者さんがいないため、
大きな街まで出ていかないと治療をすることができません。
さらに病院に行ったとしても治療の多くは、抜く。これが主流です。
農村ではほぼ歯がないおばあちゃんをよく見かけます。
そんなカンボジア農村に生まれ育ったファクトリーの女性たちにも、
歯の問題をかかえている子は少なくありませんでした。
今回のトレーニングは、
今年の2月にNPOカムカムクメールさんが
ファクトリーを訪問してくださったところから始まっています。
ファクトリーの活動を見ていただいた時、
女性たちの歯に関する問題についても相談にのってくださり、
そこから今回のトレーニングが実現しました。
図や人形を使った実践的なトレーニング
トレーニングは、最初のガイダンスとアンケートから始まり、
3人の先生により一人ひとりの歯科健診を行いました。
整った設備は何もない場所でしたが、
識字教室の場所を活用して一人ひとりが先生に丁寧に歯をチェックしていただきました。
その後、図や人形を使ったトレーニングに移りました。
"虫歯や歯周病がおこる時にはいったい口の中で何がおこっているのか"、
"それを予防するために何が必要なのか"、
"効果的な歯磨きはどうやるのか"
"唾液を増やすための体操"など、
とってもバラエティにとんでいて、
かつ実用的な内容をわかりやすく楽しく教えていただきました。
初めての内容、そして実践しやすい内容に女性たちも興味津々で、
わいわい笑顔の絶えないトレーニングでした。
女性たちの口の中は、虫歯は驚くことにほとんどなく、
親しらずまでしっかり機能している子が多かったそうです。
小さい時にあまり砂糖菓子を食べていないことが丈夫な歯を作っているのかもしれない、
とのことでした。
その一方で、歯周病などのおそれがある子が多く、
これからの正しい歯磨き等での対応が大切になっています。
次世代の虫歯予防にも繋がる
今回トレーニングをしていただいたことは、
女性たち本人の虫歯や歯周病を防ぐのみならず、次の世代の虫歯予防にもなります。
16歳~30歳くらいの年齢層が厚いファクトリーの女性たちは、
これからお母さんになる人が多くいるからです。
近ごろはかわいく包装された砂糖たっぷりの菓子が、
農村の駄菓子屋さんでずいぶん売られるようになっており、
子どもの虫歯がとても増えているとのこと。
子どもの歯を正しく磨いてあげることは、カンボジアの虫歯を防ぐ大切なアプローチで、
そのためにはお母さんが正しい歯の磨き方を知らないといけません。
自分自身だけでなく、子どもの歯の磨き方についてもデモンストレーションしてくださったことは、
カンボジアの女性達の虫歯予防にはもちろん、次世代の虫歯予防にもつながります。
女性達の生活習慣をよく考慮した上でのサポートが重要
今回の健診は、ほとんどの女性たちにとって、人生初めての歯磨き健診・トレーニングでした。
だからこそいつも以上に、ここからが大切と思っています。
ずっと染み付いている生活習慣を変えるとか、
ちょっとでも変化をもたらすというのはそう簡単ではないことだからです。
長年染み付いた習慣にはそれ相応の理由や信念があります。
私がいつもトレーニングをスタッフと共に企画・実施する時に思うことは、
自分自身が当たり前と思っている習慣や意識をしっかりと認識した上で、
農村の女性たちの生活環境や習慣を見つめることがまず大切だということです。
歯を磨いていないからだめだとかいいとか、そういうことではなく
「実際の彼女たちの生活習慣をとにかくよく考慮して、
彼女たちが納得をして自身で変化を起こしていくこと」
そのサポートをしていきたい、そう強く思っています。
整った洗面所があるわけではなく、良い歯ブラシを持っているわけでもない。
そんな中でいかに実用的なトレーニングをするかというのが重要で、
今回カムカムクメールさんにしていただいたトレーニングからは、
私自身もいろいろと学ぶところがありました。
そして、何より今回のトレーニングをしっかり活用できるよう、
スタッフと共に工夫をしたいと思います。
改めまして、とても有意義なトレーニングを提供ただきました
NPO法人カムカムクメールさんに改めましてこの場を借りてお礼申し上げます。
ファクトリーの女性たちは100名を超える人数のため、暑い中、同じ内容を4回にもわたって、
朝から夕方までじっくりやっていただきました。本当にありがとうございました。
カンボジア事業ソーシャルエンパワメント部門マネージャー。2008年よりインターンとしてかものはしプロジェクトで活動を開始。大学院卒業後、2012年よりカンボジア現地駐在。ファクトリーの女性たちのケアやトレーニング等を担当。