【後編】コルカタ・シャンブドによる少女たちの心の底にある「恐怖と向き合う」プログラム
date2013.10.25
前回の記事に引き続き、
Kolkata Sanved(コルカタ・シャンブド)の
プログラムについて紹介する。
今回紹介するのは、「恐怖と向き合うプログラム」だ。
このプログラムでは、被害者の参加者は
顔が見えると恐怖を告白しづらいため、仮面をかぶる。
そして、それぞれの恐怖を「身体」と「声」で表現をする。
それを他の参加者が真似をする。
そうすることで、恐怖がグループの中で伝染し本当に恐ろしくなってくる。
プログラムを観察するだけの僕まで
恐怖が伝わってきて、ものすごく怖くなった。
※恐怖と向き合うプログラム
そして、それぞれが恐怖を感じたのち、
自分が何を恐れているのかを一人ずつ告白していく。
「近寄ってくる男が怖い」
「家族に見捨てられたくない」など・・・
最後に、みんなで「恐怖なんか怖くない!」と叫びながら、
仮面を取り去り、殴り捨てる。
参加者に聞くと、
「自分の中にある恐怖が何か認識できた」
「怖いことは消えないが、それと付き合うことができそうに感じた」
という感想を述べていた。
このプログラムの背景には以下のようなことがある。
被害者は救出された後に、警察官、裁判官、家族、NGOのスタッフなど
様々な人に「何が起きたのか」を聞かれ、説明をしなければならない。
つまり、彼女たちにとって、
とてもつらく重くて口に出したくもない経験を
説明しなければならないのだ。
しかも、相手は「警察官」や「裁判官」という権威がある人たちだ。
場合によっては、「汚い仕事をしていたやつ」とか、
「被害にあったのはあなたにも原因があったのでは?」と
相手が見てくるかもしれないという恐れが、彼女たちにはあるのだ。
そうした状況で、きちんと事実を説明できるだろうか。
僕だったらできない。
怖くなって、相手の言うがままになり、その場をどうにかやり過ごそうと
小さく縮こまっていることしかできないだろうと思う。
しかし、それでは彼女たちは「正義」を手にすることはできない。
事実を伝えなければ、相手には何も伝わらず、誤解を招いてしまう。
事実を伝えなければ、本当のことが嘘のことになってしまう。
被害に遭ったのに、それを伝えなければ、
誰も彼女たちを助けることができない。
彼女たちが正義を手にするためには、
自分のことを自分の口から伝えなければいけないのだ。
つまり、事実をきちんと相手に主張しない限り、
ずっと自分が自分を苦しめるままなのだ。
そのために、誰かに支配され傷ついた自分の「身体」を
自分のもとに取り戻す。
そして、自分の中の恐怖と向き合い、それを整理をすることにより、
誰からにも何にも支配されていない「本当の自分」というものが
わかってくるのではないろうか。
その時、きっと彼女たちは前より強くなるはずだ。
このようなことから、心も身体も人身売買という
悪から抜け出すためにも
シャンブドのプログラムはとても大切なのだ。
そして、そこで得るものが、
確実に彼女たちを良い方向へと変えていくだろう。
シャンブドでは、このような被害者が尊厳を取り戻すためのプログラムを
細かく作り、被害者に提供をしている。
最後に、代表のソヒニと対話をしていて、
すごく良いなと思った言葉を紹介したい。
「社会を変えることは難しい。
しかし自分を変えることはできる。
自分が変わることで、社会を変えることができる。」
※一部コルカタ・シャンブドのスタッフと代表ソヒニさん
かものはし共同代表の一人。東京大学在学中に、かものはしプロジェクトを村田、青木と共に設立。2013年6月より本格的にインドのムンバイに移住し、駐在中。