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売春宿から故郷に戻っても続くインド少女の苦しみと救い

date2014.2.20

ハッピーエンドはいつ訪れるのか?

バングラデシュと国境を接している西ベンガル州。
農村出身の14歳の女の子がいました。
彼女は人身売買の被害に遭い、ムンバイの売春宿に連れて行かれました。

農村.jpg※この写真は登場人物本人ではありません。

彼女をだまして連れ去ったのは、斜め前の家に住むおじさんでした。

彼女は運良く警察の救出活動によって、レスキューされ、
NGOのシェルターに入りました。

そして、彼女は故郷へと帰ることができました。

ここまでの話であれば、ハッピーエンドのように聞こえます。

2012年2月のインド出張では、大きな売春宿街がある
人身売買先の「目的地」と呼ばれる都市を中心に回りました。

売春宿街を通り、レスキューをしている団体に行き、
救出されたばかりの女の子たちから話を聞かせてもらいました。

見聞きすること全てが衝撃的で、
早くこの苦しみから女の子たちが解放されることを
願わざるをえない状況でした。

しかし、決して彼女たちの苦しみは
レスキューされただけでは終わりではないことを
今回の出張で痛感することになりました。

今回の出張は、彼女たちの故郷でもある農村地域を中心に回りました。
農村地帯は人身売買元である「発生地」と呼ばれています。

でこぼこの農道を通り、帰ってきた被害者少女に寄り添って支援している団体
GGBK(かものはしのパートナー団体)に行き、かものはしが支援している
女の子たちに話を聞かせてもらいました。

彼女たちは本当にたくさんの苦しみを抱えていました。

例えば...
◆周囲の人や家族にも受け入れてもらえずに、その「孤独感」に苦しみ、
自殺するところまで追い込まれてしまう子もいます。
◆人身売買加害者から受けた心の傷が癒えずに「トラウマ」に苦しむ子もいます。
頭に熱したアイロンをあてられた子もいました。
◆自宅の近くに今も住んでいる人身売買加害者や
その家族から激しい「嫌がらせ」を受けて、家族ごと暴力をふるわれたり、
家を焼かれたりした子もいます。
◆裁判の場で戦おうにも、その知識も資金もなく、
自身の「社会的正義」を取り戻すこともできずに
泣き寝入りせざるをえない子もいます。

いろいろな複雑な苦しみを抱えています。
一度被害を受けてしまうと、その後も長く深い悪影響を受けてしまうのが
この問題の厄介なところだということを再認識しました。

一方で、かものはしが支援をしている17歳の女の子の話は
希望を持たせてくれるものでした。

人身売買の被害に遭い、村に戻ってきたばかりの頃、
当時の彼女は家に引きこもり、毎日塞ぎ込んでいました。

その様子を見かねたお母さんが、
GGBKがやっているセラピーへの参加を勧め、
渋々参加するようになりました。

詩や絵を書くようなセラピーがあるのですが、
彼女の書く詩は「死」や「絶望」を連想させる言葉が並び、
絵も黒と白の単調なものばかりでした。

しかし、何度かセラピーに通っているうちに、
少しずつ彼女は自己認識をし、自己受容、自己開示、自己表現、自己肯定が
できるようになっていきました。

それから彼女はかものはしとGGBKの支援を受けて、
養鶏と服飾のマイクロビジネス(経済的自立支援)を始めることにしました。
養鶏 (1).jpg※この写真は登場人物本人ではありません。

その女性は次のように語ってくれました。
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いつからか、セラピーが終わった帰り道に
新しく何をしよう?
どんなことに挑戦してみよう?

とワクワクしながら帰るようになりました。

生まれてからずっと自分は「支配される側」の人間だと思っていたけど、
自分のビジネスを持つことで自分は誰かに「価値を提供できるのだ」
と気づくことができました。
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まだ事業面では課題もありますが、僕は初めてビジネス(経済的自立支援)が
単なる生活の糧を得るための手段ではなく、人の自尊心を高め、
自己効力感を育むセラピーのような効果もあるのだと気づかされました。

もちろん、安定した利益が出ないことには意味がないので、
今後もパートナー団体と継続的に改善していきます。

そして、彼女はついに裁判の証言台に立って、闘うことを決意しました。
裁判で最終的に有罪判決がでることは簡単ではありません。
長い長い年月がかかります。

それを知ってもなお戦おうと思った理由を聞くと、
「もう私のような女の子が出てほしくないから」
と答えました。
この話をしている間、彼女の目はとても力強いものでした。

現地を訪れる度に、状況を詳しく知れば知るほどに、
この問題の大きさ・複雑さ・深刻さを突きつけられ、
とてもつらい気持ちになります。

しかし、彼女のような「サバイバー(生き抜いた人)」を
一人ずつ増やしていけば、少しずつかもしれないが、
インドでもこの問題は良くしていけるのではないかと思えます。

まだ、かものはしのインドでの挑戦は始まったばかりです。
かものはしだけでこの壁を突破することはできません。

だから、インド現地ではパートナー団体と協力し、
日本ではより多くの支援者の方に少しずつ助けていただき、
この大きな壁を突破していきたいと思います。

引き続き、ご支援よろしくお願いします!

より詳しく知りたい方は、
8/26@かものはし恵比寿オフィスにて開催される
「かもトーク」へぜひご参加ください。

詳しくはこちら

130730_test.jpgライター紹介:山元圭太日本事業統括ディレクター。日本の事業全般の統括を担当。5年間コンサルティング会社で勤務し、2009年よりかものはしプロジェクトに参画。

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