勇気ある決断をしたサバイバーを、一緒に応援してください
date2015.3.4
こんにちは。インド事業部の清水です。
今日は、皆様に緊急のお願いがあってこのブログを書くことにしました。
サリナとハリマ(共に仮名)は、2011年にレスキューされました。
彼女たちを搾取し続けた業者は、裁判で誘拐や未成年の売春斡旋などの罪を問われています。
サリナとハリマは、この事件に関して来週2015年3月9日(月)に、裁判で証言をします。
私がサリナやハリマだったら、二度とあの人たちの顔を見たくない。
自分が経験してしまった地獄は、記憶の底に封印して、
やっと、日常生活を送れるレベルまでに回復した。
その封印を解いて、自分が受けた暴力と性的被害という、
最も他人に聞かれたくない話を、裁判官の前で、
多くの人の前で証言するなんて、怖くてできない。
証言しても、あの人たちが有罪になるのかは、よくわからない。
きっと、そんな風に思うと思う。
だから、自らの意思で証言をすると決めたサリナとハリマの、
勇気ある行動と強さを前に、泣きたい気持ちでいっぱいになりました。
彼女たちの勇気が歪められてしまわないように、
被告人たちからの圧力や不本意な判決を前に潰されてしまわないように、
かものはしからだけでなく、皆様のあたたかい声援が必要です。
どうぞ、このブログを最後までお読みいただき、
是非、皆様のあたたかいコメントをお寄せください。
サリナの闘い
サリナは、かものはしが西ベンガル州の南24区で実施しているプログラムに
参加しているサバイバー(人身売買被害者。被害を生き抜いてきた人)です。
サリナは、いい働き口を紹介してあげるという言葉に騙されて、
南24区から1500キロ離れたマハラシュートラ州にある売春宿に売られました。
17歳の時でした。
売春宿で彼女が味わったのは地獄でした。
クスリを飲まされ、衣装ケースくらいの狭い空間に押し込められ、
性的暴行を受け、虐待を受け、客を取らされ、
売上はすべて巻き上げられました。
彼女はすべてを支配されていたのです。
彼女は、警察と、かものはしのパートナー団体にレスキューされ、
売春宿で彼女を搾取し続けた被告人のうち2名が、
サリナの救出時に警察に逮捕されました。2011年夏のことです。
それからサリナは村に戻ってきて、かものはしと現地のNGOの支援を受けながら、
傷つき壊れた心を徐々に回復させ、南24区の自分の村に小さなお店を開いて、
3年半という月日をかけて「支配される側」から「何かを自分で決める側」に成長してきました。
詳しくは2013年度年次報告書をご覧下さい。
3年半、サリナはずっと、自分を搾取し続けた人身売買業者がどうなったのか
知りたいと思っていました。
でも知りたいと思っても、彼女にその術はなく、
どうしようもない哀しさを抱えていました。
しかし、今年2月になって、管轄の裁判所よりサリナに
「証言者」として出頭するよう要請が入ったのです。
サリナが救出された当時逮捕され、被告人となった2名には
13の罪状がつきました。
誘拐、監禁、傷害、暴行、強要、強姦罪のほか、
未成年の売春周旋、斡旋、売春宿の違法営業、などです。
同事件の被害者として名前が挙がっている女の子たちのうち、
サリナとハリマの2名は、いろいろ悩み、時間をかけて家族と相談した結果、
往復4日間かけて、裁判所があるマハラシュートラ州まで行き、
証言をする決心をしたのです。
大きな決心をしたサリナとハリマを応援したい
サリナとハリマの勇気ある行動は、他のサバイバーに希望をもたらす。
サリナとハリマにとって、
自分たちの地獄の記憶があるマハラシュートラ州に降り立つのは、
救出された4年前が最後、4年ぶりです。
4年というのは長いようで短く、
思い出したくない当時の苦しい記憶が
フラッシュバックする可能性が十分ありえます。
裁判所では、上述の罪状がついている被告人と向き合わなければなりません。
話したくないこと、思い出したくないことを、
被告人の弁護人から根掘り葉掘り問われるかもしれません。
そもそもマハラシュートラ州は彼女たちにとって「アウェイ」であり、
それだけで心がギューッと縮こまってしまうのは想像に難くありません。
それでも、サリナとハリマは行くことを決心したのです。
行って、彼女たちの地獄の日々を証言することを決心したのです。
彼女たちの「正義」という夢を勝ち取るために。
何人もの、彼女と同じような目に遭いながらも声を上げることができなかった
仲間たちのために。
私は、サリナたちが証言をすることはとても大切だと思っています。
人身売買に関与している、今回の被告人たちが有罪にならなければ、
彼らはまた別の弱い女性を騙して売る可能性が高いからです。
サリナやハリマのような被害者が出ないようにするために、
彼女たちの証言はとても大切なのです。
彼女たちが生き抜いてきた4年間という月日が無駄にならないためにも、
私は、なんとしても、サリナとハリマを、
遠く日本にいても、精いっぱい心の底から応援したいと思いました。
その時、半年前にサリナが言っていた言葉を思い出しました。
「人身売買がインドほど日常茶飯事で起きていない、
遠い日本という国から、私を応援しようとしてくれている人がいることが、
本当に信じられないし、とても嬉しい。
でも、どうして皆私のことを応援してくれるんだろう?
みんなに一度会って、
私たちの国のことを、人身売買被害のことを、
それを生き抜いてきた女性たちのことを直接話してみたい」。
裁判は、証言者が遠くから証言に来ても、
弁護人欠席のため証人喚問延期、とか、
裁判官所用のため閉廷、といったことが日常茶飯事に起きます。
今回、サリナとハリマが証言することで、
上述の被告人2名が確実に有罪になるという確信があるわけでもありません。
でも、裁判所の証言台に立った彼女たちが、
その瞬間に勇気が奪われることがないように、
被告人たちの無言の圧力に心が折られないように、
是非、皆様のお力をそっと貸していただけないでしょうか?
皆様からのあたたかいコメントを、私は、サリナとハリマの証言前に、
彼女たちに届けます。
彼女たちは来週の月曜日マハラシュートラ州の裁判所で証言をするため、
6日の金曜日にカルカッタを出発します。
かものはしは、彼女たちの裁判費用を負担します。
でも、お金だけでなく、皆様のあたたかい言葉は、
きっと、彼女たちの心の支えになると思います。
このページの下まで行っていただくとコメントを書く欄があります。
皆様のコメントを日本語で受け取って、かものはしで翻訳をし、
サリナとハリマに確実に届けます。
メッセージをどうぞ送ってください。お願いします。
メッセージはメールでも受け付けています。
info@kamonohashi-project.netまで、メールにてお送りください。
インド事業部シニアプログラムマネージャー。2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。