サバイバーとのコミュニケーションで感じたこと
date2016.3.25
こんにちは、広報・ファンドレイジング事業部の草薙です。
この度、広報担当としてインド現地の生の様子を知り、
日本のみなさまにお伝えするために
2016年1月~2月にかけてムンバイとコルタカを訪れてきました。
インド現地でNGOの方々とお話し、売春宿街を訪れ、
そしてサバイバー(人身売買被害者。被害を生き抜いてきた人)と
コミュニケーションを取ってきました。
9日間の出張期間中にNGOメンバーの活躍に感銘を受けたり、
現実の厳しさに悲しくなったりと色々な気持ちを抱きました。
今回のブログでは、
そんな出張の中で一番心を動かされた時のことをお伝えしたいと思います。
サバイバーの意外な姿
それは我々のパートナー団体である
STCI(Save The Children India)を訪れた時のことです。
(※STCIについては、2013年11月「人身売買を抑止するには、一体誰が鍵を握っているのか。社会・法的要因から理解する調査を実施。」をご覧ください。)
(STCI訪問時の様子)
STCIではサバイバーの子たちのリーガルカウンセリングや
職業訓練、就職斡旋を行っています。
今回、訪問をした際にカウンセリング中だった
15~20人くらいのサバイバーの子たちと会うことができました。
みんな10代、20代の女の子たちです。
インドの駅名が書かれたカードを並べるワークショップをして
みんなでコミュニケーションを取っていました。
僕は彼女たちに会った時に「話してみたいな」と思う気持ちと
「話してはいけない」という2つの相反する気持ちを抱きました。
「話してみたい」と思ったのは、
彼女たちが今何を思ってどんな気持ちで
毎日を過ごしているのか知りたいと思ったからです。
そして「話してはいけない」と思ったのは、
彼女たちは男性を怖がっていて
近付くと恐怖を与えてしまうのではないかと思ったからです。
そのため、少し距離を置いたところに立っていたのですが、
STCIのスタッフから「興味があったら話してみても大丈夫だよ。」とプッシュしてもらい、
僕は彼女たちに近付き話しかけました。
「この駅名はなんていうの?教えて。」
と質問したところ、彼女たちは笑って「○○(駅名)だよ!」と答えてくれました。
予想以上に明るく、ビックリしました。
うまく聞き取れずに「△△?」と聞き直すと、
「違うよ、○○!!」と笑って答えてくれます。
共通言語を持っていなかったので、
結果的に他愛のないやり取りしかできなかったのですが、
僕の目を見て笑って「違うってー。」と話してくれる彼女たちを見ていると
なぜか涙が溢れてきそうになりました。
涙の理由
その場では涙をこらえることに必死だったのですが、
その日の夜に改めて僕は
何であんなに泣きそうになってしまったのだろうと考えてみました。
(ムンバイの様子)
整理すると僕は以下の3つの感情を抱いていました。
①理不尽さにやるせない気持ちになった
彼女たちの目はとても澄んでいて、
少しの会話でピュアな子たちであるということが伝わってきました。
そんな子たちがひどい目に遭わされてしまう現実に対してやるせない気持ち、
悲しい気持ちを抱きました。
②自分の仕事を肯定してくれてありがとうと思った
仕事をする中で
子どもが売られる問題の厳しい現実に触れて
心が折れそうになったことは多々あったのですが、
そんな中でも「この子たちの力になれるのであれば
この仕事をしていて本当に良かった。」と思うことができました。
彼女たちの笑顔が僕の仕事を肯定してくれたような気がして
「ありがとう。」と感謝の気持ちを僕は抱いていました。
③目を背けた時があることを謝りたいと思った
今日まで正直、気が乗らないとかそのような理由で
仕事上のスキルを伸ばすことを後回しにしたことがありました。
もっとスキルを身に付けた上で力になることができなくてごめんなさい、
と自分の無力感を申し訳なく感じていました。
上記の複数の感情を一度に抱き、
それを受け止め切ることができずに
それが涙となって流れてきそうになっていました。
今回、彼女たちとのコミュニケーションを通じて
この問題をなくしたいという思いが強くなり、
僕にとってはとても大切な時間になりました。
僕は、彼女たちの思いや問題の現状を
国内のみなさまに今後も伝え続けていきます。
機会があれば当団体のイベントや講演に参加をして
問題を知っていただけると嬉しく思います。
認定NPO法人かものはしプロジェクト広報・ファンドレイジング担当。世界の不均衡な現実をなくしていきたいという思いから、2014年2月よりかものはしへ参画。子どもが売られる問題をなくすためにできることを多くの人々に共有するため、日本事業部にて講演活動を行っている。