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Feature Report特集レポート

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Report of Cambodia & India

希望を消さない―「活動を始めて18年、明るい希望を見出した矢先の絶望。でも、この流れを絶対に止めたくない!」

このレポートで使われている写真の女性は全て、本文に登場する女性とは関係ありません。

希望を消さない―「活動を始めて18年、明るい希望を見出した矢先の絶望。でも、この流れを絶対に止めたくない!」

2019年度年次報告書より

Report of Cambodia & India

村田 早耶香Sayaka Murata

共同創業者・アフターケア事業部

カンボジアにて

 「どうしてこんなにひどいことが起きるのか」。カンボジアで、売春宿から保護された6歳の女の子に出会ったとき、あまりにも年齢の低い子どもが被害にあっていることを知り、怒りに打ち震えました。

 2002年に「子どもが売られる問題」がもっとも深刻だと言われていたカンボジアで活動を開始し、「かものはしプロジェクト」を立ち上げてから18年。なんとしてもこの問題を解決したいと強く思った大学生のときから、今でもこの思いは変わらず私を突き動かしています。

 「子どもが売られない世界をつくる」そう思って、カンボジアで活動をしていたときは無我夢中で毎日を走り抜けました。何もない中から事務所を作り、たくさんの失敗を経験しながら、農村にコミュニティファクトリーを設立し、警察支援も始まりました。さまざまな人たちの努力のおかげで、カンボジアは子どもが売られる問題がなくなったと言える状態になりました。

インドにて

 カンボジアの被害状況が改善されたため、状況が深刻だったインドで活動を広げていきました。インドでは、自分の意思に反して強制的に働かされていたとしても、売春宿で働いていたことで、村に戻った被害者がひどい差別を受けていました。復学できない、仕事に就けない、結婚が不利になる、村で家族も含めてのけ者にされる。「まるで何か悪いことをした人であるかのように扱われた」と言っている元被害者の女性もいました。

 インドでは、「サバイバー(人身売買被害者)に寄り添いともに声をあげる支援」と、「社会の仕組みを変える支援」を行っています。被害にあい、なんとか助けられて生き延びたサバイバーに、心の回復支援、生活を取り戻すための支援、裁判支援なども行っています。さらに、支援を受けたサバイバーが、グループをつくり、社会や政府に対する働きかけを行うリーダーとなりました。現在158人のリーダーが活躍しています。

私たちが目指している世界

 これまで多くのNGOが支援をする中で、人身売買のサバイバーは、あくまでも「受益者」で、支援を受ける側でした。受益者であるサバイバーの声が聴かれることは少なく、支援は一方的に行われることが多い状況でした。サバイバーのリーダーシップ支援を行い、サバイバーリーダーの声を聴く機会を作っていったところ、「本当は今すぐ家族のもとに帰りたかったのに、いつまで保護施設にいなければいけないのか、いつ私が家族のもとに帰れるのが決まるのか何の説明もなかった」と怒りをあらわにするサバイバーや、よかれと思って行っていたNGOの支援が、実はサバイバーの声を抑圧していたと指摘されることもありました。

 障がい者の共通の思いを表した、「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」という言葉がありますが、この言葉はすべての支援活動に共通する思いだと思います。また、サバイバーリーダーが人身売買の被害者に寄り添う活動をすることで本音を言いやすくなったり、「私もがんばればこんな風に輝くリーダーになれるんだ」と彼女たちのロールモデルになっていました。また、サバイバーリーダーの言葉は多くの人の心を動かし、ともに活動するインドのNGOだけではなく、インドの政治家やメディアを大きく動かしています。

 私は当事者リーダーの活躍をみる中で、支援のあり方というものを改めて考えていました。数値として人身売買被害者が減ったとしても、当事者にとって良いと思える支援でなければ押し付けになってしまいます。私たちが目指しているのは、当事者の声も、関わっている人の声も聴かれ、対等で尊厳が守られ、支援をする、されるという関係を超えた世界です。

ずっと気になっていた日本

 インドでの活動が進んでいる一方で、数年前からずっと気になっていることがありました。それは、日本の子ども・若者を取り巻く状況です。18年以上活動をしている中で、全国さまざまな地域において年間100回を超える講演を行い、本当にたくさんの方々と出会いました。その中には、ご自身が受けた虐待の経験を語ってくれた子ども・若者も少なくはありませんでした。長年海外で子ども・若者支援をしてきたけれど、足元で起きていることに対して何もできない歯がゆさを感じました。「親から殴られるのを我慢してるよりも、凍えるけれど外で寝ている方がましだった」という言葉に衝撃を受けました。日本で起きている子ども・若者への不条理な状況を変えたいと強く思いながらも、何もできないことが悔しく、幾度も涙を流しました。

 カンボジア、インドでの学びを、自国の子どもたちのために活かすときなのではないかと、関係者の皆さまとの対話を続け、ようやく昨年度の総会決議で、「調査と実験的な活動」へのご承認をいただき、日本での活動の準備が始まりました。そして、今年、いよいよ日本での活動を本格的に始める準備が整いました。日本の中でも、支援を受ける側の子ども・若者の声が、関係する人たちに届き、その声が社会に反映されることで、子ども・若者にとってより良い社会になることを目指しています。

ようやく軌道にのってきた矢先の絶望

 インドの活動が前に進み、日本での活動も「ようやく始められる」と意気込んでいた矢先の2020年3月25日、新型コロナウイルス蔓延による影響で、インドは全土封鎖されました。一緒に活動してきたサバイバーリーダーたちの多くが収入を断たれ、食べることもできない状況に追い込まれました。「2日に一度しか食事を取れない」という声が多数寄せられました。そのため、命を繋ぐための緊急支援を、サバイバーリーダーたちに対して行いました。

 「これでひとまず皆が安心できる」と思った矢先、サバイバーリーダーたちが暮らしている西ベンガル州を、大型サイクロン「アンファン」が襲いました。サイクロンが通り過ぎた後、通信が途絶えた彼女たちの家をインドのパートナー団体のスタッフが訪ねると、無残にもぺしゃんこに潰れた家が残っていました。食べることにも困っていた人たちをさらに自然災害が襲った。この彼女たちの状況を考えると頭が真っ白になりました。

 まだインドの通信状況が悪く、連絡が取りにくい状況が続いています。(2020年5月27日現在)ですが、まずは打撃を受けた西ベンガル州のサバイバーリーダーたちが生活を取り戻し、再び社会を変える活動ができるよう、せっかく見えてきた「当事者の声が聴かれ、その声が受けとめられる世界」が消えてしまわないよう、この流れを消さないために、前を向いて歩み続けます。そのために、ぜひこれからも力をお貸し下さい。

村田 早耶香Sayaka Murata

共同創業者・アフターケア事業部

大学在学中に東南アジアで子どもが売られる問題の深刻な現状を見て、最初は一人で出来ることから取組みを開始しました。その後20歳の時に仲間出会いかものはしプロジェクトを創業しました。現在は日本で子どもが傷つけられている現状を変えたいと日本事業を進めています。綺麗な海が大好きです。

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