かものはし総会2021〜「子どもが売られない世界」へ、一歩一歩〜
date2021.7.27
日頃よりあたたかいご支援をありがとうございます。
かものはしプロジェクトインターンの阿部です。
6月27日(日)に、かものはし総会をオンラインで開催しました。
今年は100人以上の方に参加していただき、さらに少人数でのブレイクアウトルームでディスカッションも行いました。
かものはしのこれからの可能性と皆さまの熱意にあふれた総会当日の様子を阿部がリポートします!
総会の構成
1.事業報告
2.役員によるパネルディスカッション
3.役員選出
4.総会議決
かものはしの事業報告
ここではそれぞれのプレゼンターから、事業全体、インド事業、日本事業、広報・ファンドレイジング・財務について、2020年度の成果や2021年の支援の現状、これからの支援について報告し、最後にかものはしの今後のミッションについてもお話させていただきました。
<インド事業>
昨年1年間を振り返ると本当にたくさんのことが起きました。一番大きかったのは、昨年3月に新型コロナウイルスの第1波がきて、インドの全土封鎖がはじまったことです。そして、5月にはサイクロンがサバイバーリーダーが住む西ベンガルに直撃し、緊急支援を行いました。4月から7月まで緊急支援につきまして、サポーターの皆さまからも多大なるご支援をいただきましたこと、あらためて御礼を申し上げます。7月以降はスピードアップして事業を実施し、駆け抜けてきました。2020年度のインド事業の成果はたくさんありますが、以下4点をご報告させていただきます。
また、皆さんも報道でご存知のように、2021年5月に入って、インドでの新型コロナウイルス第2波は大変な騒ぎになりました。どこを向いても死者という状況になり、酸素吸入器がない、ベッドがない、ということで集団パニックが起こっていました。そのような死と隣り合わせの恐怖から、かものはしが関わるインドメンバーの中でも精神的不調を訴えるメンバーが続出し、心のケアを重視する必要が高まったため、事業速度を緩めて対応しました。また、5月には同じく不安を抱える335名のサバイバーリーダーに対して一律2000ルピー(約3000円)の現金給付を行いました。
<日本事業>
日本事業では、現状の課題や今後の支援活動予定について説明させていただきました。
子どもを取り巻く不条理をなくすために、関係機関の連携・協働を促進することでコレクティブインパクトを作り出す目的から、民間のリーダーたちを資金・技術の面で伴走支援していきます。
さらに、当事者の声が聴かれないという現状を変えるために、現場の支援と政策に当事者の声を反映させる活動を試験的に行っています。例えば、虐待を受けて一時保護所にいる子どもが「家に帰りたくない」と思っているのにも関わらず、声が聴かれずに家に帰され、より重篤な虐待に発展してしまうことがあります。こういったことを防ぐために、「子どもアドボケイト」という「子どもの声を聴き、伝えたい人に伝えるサポートをする大人」を派遣する取り組みをサポートしています。第三者で守秘義務を持つアドボケイトが入ることによって、子ども自身の生活や人生に関わる重要な事柄についての本人の希望や意見を伝えやすくなります。
より当事者の子どもたち・若者達にとって現場の支援や制度がより良いものになるようにチャレンジしています。
<ミッション変更>
共同創業者の本木からは、昨年に引き続きミッション変更についてもお話しました。
これまで「子どもが売られる問題」という特定社会課題に取り組んできましたがより高次の理念を持ち、その理念に基づいた事業展開を行っていこうと考えております。また、昨年度は人身売買の状況が世界でどうなっているのかという調査を実施しました。調査した上でミッション変更の後押しをしたいと考えたためです。結果としては、創業当時の2002年頃に比べて世界各地で人身売買を減らすための取り組みは大きく進展している事がわかりました。また、調査では各国においてジェンダー・貧困・行政の汚職については根深く残っていることが分かってきています。今後、気候変動・経済格差など大きなマクロファクターの影響による社会課題が増加してくると予想しています。これらの大きな社会の流れを見ながら、どういう理念・戦略をもって活動するのかということを検討しておりますので、引き続きじっくり、ゆっくりとミッション変更に取り組んでいきます。
さらに、今回は参加者同士で4人ほどのグループを作ってグループディスカッションも行いました。
頂いたコメントから、皆さまの問題意識や関心の強さを改めて実感しました。
コメントの一部をご紹介します。
『インド協同NGOの経済状況は大丈夫なのでしょうか?供給エリアで活動しているような団体からのケアが途切れるようなことがあると心配だなと思いました。』
『大きな話をすることは大切だけれど、足元の「世界中の子どもたちに幸せでいてもらいたい」という活動理念は大事にしてもらいたい』
パネルディスカッション~ビジョンと私たちが大切にしたいこと~
ここでは、長年かものはしの役員として関わってくださっている伊藤健さんにファシリテーションをしていただき、4人の役員の方からこれからのかものはしのあり方について語っていただきました。今回は、熱く盛り上がった議論の一部をご紹介します。
〈参加役員〉
青木 健太 (NPO法人SALASUSU共同代表)
伊藤 健(慶応義塾大学大学院制作・メディア研究科 特任講師、Asian Venture Philanthropy Network, East Asia Director)
篠田 真貴子(エール株式会社取締役)
樋口 哲朗(樋口公認会計士事務所 所長)
横山 十祉子 (システムアウェアネスコンサルティング代表)
伊藤:「流動的で課題が山積している現代の社会で、私たちNPOの役割やできることは何でしょうか?」
篠田:「営利・非営利がお互いにそれぞれが編み出した方法論を学び合いながら、それぞれが活動していくステージにあると思います。「誰に何を届けるか?」の大枠を決めるのが経営だと思っています。複雑な中でシンプルに考えることが重要だと思います。
横山:「今大切なことは、自分の根っこに何があるのか、ということ。個人の内面も成熟させながら、これをしっかり見極めることが、社会を変えていくためには大切なのではないでしょうか。」
青木:「社会全体を動かすための活動と、現場での手触り感を大切にする活動のどちらも共存させながら進むと良いと思います。2つの活動があって葛藤する気持ちなどを抱えていくのが大事だと考えます。手触り感がある活動を続けていく中で社会全体を動かすポイントが見えてくることがあると思っています。
樋口:「一人一人が少しずつのアクションを起こすことがまず必要で、それがスタートになると考えます。半径5mの人達を変えていく、という活動を続けていくのが良いと思います。かものはしがそうした小さなアクションのプラットフォームになって、大きなものに変えることができるのではないでしょうか。」
お話しいただいた4人は、それぞれ違う専門分野でかものはしを支えてくださっている方々です。異なる視点からのお話ですが、私は根底には共通して「目の前にある自分が解決したいと思う問題に少しずつ取り組んでいく」という考えがあるように思いました。
参加者の皆さまの様子
総会の最後に参加者全員で写真撮影をしました!
最後に
今回総会に参加してみて、かものはしに関わってくださっている皆さまがとても熱い思いをもって、一緒に問題解決を目指してくださっているのだなと改めて感じました。
特にそう感じたのは、ブレイクアウトセッションやその後のZoomチャットの活発さです。ただ共感していただくだけでなく、「ここはどうなっているの?」「こうした方が良いのではないか」「それは本当に大丈夫?」など活発な意見が見られ、真剣に問題やかものはしに向き合ってくださっているのだと思いました。
ここで私にとって、とても印象的だったインド事業担当清水の言葉をご紹介したいと思います。
「大河の一滴、されど、大河は一滴の総体」
私たちの2000ルピーの現金給付は、少しの支援であり、目標である人身売買問題のシステムを変えることにとっては何も意味が無いようにも見えます。しかし、今まで家族のなかで弱い立場にいた彼女たちが月に2000ルピーをもたらすことで、それが家族全体の救いになり、それまで彼女たちが抱えてきた家族内のパワーダイナミクスを大きく変えることになったのです。この一滴のかものはしの現金給付があったからこそ、彼女たちサバイバーリーダーは大きなリーダーシップアクションをとることが出来ています。
かものはしインターンになってから、毎日が刺激の連続ですが、今回ほど支援のあり方や私たちの役割について考え、刺激を受けた日は無かったと思います。きっと、こうした様々な方との対話とそこからの学びがあるからこそ、かものはしは成長できるのだなと感じました。
これからも皆さまのお力をお借りしながら、皆さまとともにかものはしプロジェクトは歩み続けます。
日々邁進してまいりますので引き続きかものはしプロジェクトをよろしくお願いします!
なお、今回の総会で報告した2020年度のインドでの活動や日本事業に関する詳細は7月発送のサポーター会員様にお届けする年次報告書でもご報告しております。詳細をお知りになりたい方はWEB上でもご覧いただけますので、ぜひご覧ください!(年次報告書はこちらから)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。