2020年度年次報告書より
Report of India
人身売買の被害にあった女性たちが、権利・正義を取り戻せるよう、社会の仕組み作りに取り組むタフティーシュ事業は、8年目に入りました。
2020年度は、コロナ禍でロックダウンとなり厳しい生活を余儀なくされたサバイバーたちへの緊急支援からスタートし、その後、中期戦略計画(2019~2024年)に基づいて、継続して裁判支援、サバイバーの生活再建を基軸に、刑事司法制度や福祉制度の強化に取り組みました。2021年3月末時点で、191人のサバイバーを支援しています。
Tafteesh事業はインド現地のパートナー団体、
海外助成団体と協力して活動しています。
期間 | 2019年9月 〜 2022年11月 |
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事業費 | 1億5284万円(1ドル=107円) |
2020年度 支出実績 |
3635万円 |
2020年度のタフティーシュ事業で特筆すべき点として、以下が挙げられます。
2020年度タフティーシュ事業のハイライト
- 1パートナー団体のスタッフ53人にメンタルヘルス支援を実施
- 2デジタルマーケティング(クラウドファンディング・オンライン署名・オンラインイベント等)を活用して、人身売買問題に深く関わる出稼ぎ労働の問題について訴える「Let’s Talk Labour(労働について話そう)」キャンペーンを実施
- 3全世界における人身売買予防事業の傾向とインパクトに関する調査の実施
- 4サバイバーの置かれた状況やケースの情報などを管理、分析するためのMIS(情報システム)の再構築
- 5タフティーシュ事業で連携している弁護士グループと国選弁護人との協働、及び裁判支援を行っているケースの担当を国選弁護人へ移行
- 6人身売買特別警察の現状調査と強化キャンペーンの実施
また、2020年度を通じて、人身売買被害者に対する被害者補償のシステム強化は順調に推移しています。そして、人身売買犯罪捜査においても、同犯罪への捜査権限を持たない地元警察が担当していた状態から、次第に人身売買特別警察に捜査担当を移管するプロセスが起き始めていることを確認しています。これらの各軸で起きている前向きな変容を統合し、サバイバーの足元の生活レベル、及び実際の被害者数減少までインパクトを出すために、今後モニタリングの視座を変え、モニタリングの強化や、データに基づく計画の軌道修正を行っていく予定です。
©Siddhartha Hajra
一方、2020年度は、これまで休みなく働き続けてきたソーシャルワーカーやNGOのリーダーたちの疲弊感、閉塞感が顕著に出た一年でもありました。新型コロナウイルスの感染拡大による全土封鎖、移動制限、そして死が家族や身近に迫っていることに加え、外国貢献規制法の改正、運用ルールの変更など、インドのNGOセクターに対する実質的な締め付けとも言えるような規制の強化が、彼らに追い打ちをかけました。そのため、サバイバー支援だけでなく、NGO支援も強化しました。年度の振り返りを行った際、サバイバーとNGO関係者から、「タフティーシュは、『私はもうひとりじゃない』という感覚を持たせてくれた」と言われ、かものはしの長期支援の確かなインパクトを、ハード面でもソフト面でも感じた一年でした。
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清水 友美Tomomi Shimizu
インド事業統括・パートナー
2011年から2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。森と温泉が好き。