かものはし総会2022~これまでの歩みとともに、新しいミッションを迎えて~
date2022.7.27
日頃よりあたたかいご支援ありがとうございます。
かものはしプロジェクトインターンの峯です。
6月26日(日)に、かものはし年次総会をオンラインで開催いたしました。
今年も100名以上の方々が参加してくださり、参加者同士の意見共有や交流の場も持たせていただきました。
かものはしスタッフの熱い想いと、支えてくださる皆さまの温かさに触れた総会の様子を峯がお伝えさせていただきます。
総会の構成
1.ミッション変更とグループ経営
2.事業報告~これまでの歩み~
3.役員によるパネルディスカッション
4.総会議決
新しいミッションとグループ経営
まず共同創業者本木より、かものはしのミッション変更と、これからの経営のあり方についてお話させていただきました。
これからの経営の20年を踏まえて、そして次の20年を見据えた大事な意志決定となっています。
<理念の変更>
この度、かものはしの新しいミッションは「だれもが、尊厳を大切にし、大切にされている世界を育む」に決定いたしました。
これまで「子どもが売られない世界をつくる」ということを掲げてきましたが、活動をする上ではこのミッションに縛られてた部分がありました。
また、この20年間ここまで活動を続けることができた中で、私たちが大切にしてきたものは何かと問いかけたときに、「尊厳」という言葉が浮かび上がりました。
自分の人生は自分で歩むことができ、違いがあってぶつかっても他者を大切にできる、このようにお互いに尊厳を大切にしあって生きていける世界を育むために、活動していきたいと思っています。(ミッション変更の詳細記事はこちら)
<グループ経営>
かものはしプロジェクトは、2018年までカンボジア事業部であり、その後独立した現在のSALASUSUという団体ともう一度グループとしてともに活動していきます。
新しいミッションにあるように、尊厳を大切にすると大きなことを言っても、かものはしの存在は小さいかもしれません。ですが、かものはしとSALASUSUがつながり、戦略やお金や人、学びを共有し、経営の実務を最適化していくことで、より大きな流れをつくり出していけると考えています。
そして、この度かものはしプロジェクトの理事長として、共同創業者の青木が就任いたしましたことをご報告させていただきます。
事業報告
ここでは各プレゼンターより、カンボジア事業、インド事業、日本事業について、これまでの歩みをお話させていただくとともに、2021年度実績および2022年度の財務計画をご報告させていただきました。
<カンボジア事業>
2018年にカンボジア事業が独立するまで、かものはしプロジェクトとしてカンボジアでチャレンジしてきたことや、そこで得た学びについて青木からお話させていただきました。
かものはしのカンボジアでの最初の取り組みはパソコン教室から始まり、2008年から現在では、農村女性の雇用と自立を支援するコミュニティファクトリー事業を展開しています。
また、孤児院の支援や警察訓練など、今までできなかったような新しい事業にも挑戦させていただき、その過程で人身売買の新規被害者数の減少を確認することができました。
一番大きな学びは、「社会は変わるんだ」ということを目の当たりにしたことです。
社会課題を解決したいという想いがあっても、知れば知るほど非常に根深い問題を前にしたとき、NGOとして深く携わっていけるのか難しさもありました。
ですが、長い時間をかけてでも支えて下さり、私たちの変化を受け入れて下さった各組織、スタッフやサポーターの方々皆さんの応援のおかげで、様々な事業に挑戦することができ、いろんなことを学んでくることができました。そして同時に人身売買問題が減っていることも確認でき、このような変化をつくって来られたと思っています。
また、人身売買の問題一つに限らず、社会にある様々な不条理をなくし、世の中をより良くしていくためには、そこに関わる当事者の方が常に学んでいきながら、自分の意志で未来を切り拓いていく必要があることも学ばせていただいた16年間でした。
<インド事業>
かものはしがインドで事業支援を始めてから10年になりました。
この10年かものはしがインドで行ってきたこと、そしてその中でインド事業ディレクターの清水から見て、かものはしの学びは何だったのかお話させていただきました。
インド事業が達成したい最終ゴールは2つあります。
一つは、サバイバーリーダーたちの声が社会に届き、優しくて力強い権利ベースの活動が主流となることです。もう一つは、州をまたぐ人身売買犯罪の捜査・裁判の仕組みができ、人権に配慮した捜査・裁判が行われることにより、子どもの性的人身売買がインドにて抑止されることです。
この2点を最終ゴールとして事業を形成し、それを底支えするのが以下の3つの柱です。
一つ目の柱は、人身売買という犯罪を取り締まる法律・政策・システムを強化することです。二つ目の柱は、サバイバー当事者のリーダーシップを育成することです。三つ目の柱は、NGOのリーダーシップ育成と組織開発を強化していくことです。
また、それぞれの柱に対応する事業は以下の通りとなっています。
まず一つ目の柱においては、社会の仕組みづくりを行うTafteesh(タフティーシュ)事業です。次に二つ目の柱においては、2018年からサバイバーのリーダーシップの成長を育成するために行っているLeadership Next事業です。最後に三つ目は、2020年に立ち上げたWe The Leadersという事業で、NGOの人たちのリーダーシップジャーニーを行っています。
それぞれの事業で昨年度末までにどんな成果が出ているのかについてはこちらに示しております。
この10年は、泣いたり怒ったり笑ったりすることがたくさんありました。
それらの感情を見てきた中で思うことは、社会問題の解決とは何だろうかということです。
これまで課題を解決するためにインドで事業を支援してまいりましたが、その社会課題が起こる背景に目を向けたとき、そこに辿り着くには複雑で、被害者や加害者も含めて当事者の方々がそれぞれ持つ、たくさんのストーリーが折り重なっていることに気づかされました。
また、加害者と思われる人にとっても、過去に同様の被害者体験があったかもしれないということ、課題の解決ばかりに焦点を当ててしまうと、その人の視点をないがしろにしてしまうかもしれないということを考えました。
そして、課題を解決することよりも、だれもが幸せに生きる権利を有するという信念を、どのように成立させるかということを考え抜く力、実行できる力、それを兼ね備えていることが大切ではないかと思いました。
これからのインド事業は、だれもが幸せに生きる権利を有しているという尊厳を真ん中に据えて、この先も事業をつくっていきたいと考えています。
<日本事業>
日本事業では、「だれもが生まれてきて良かったと思える社会をともにつくる」ために活動を行っています。ここでは、日本事業のこれまでの活動と今後の活動について村田からお話させていただきました。
日本事業は、これまで大きく分けると2つの活動をしてきました。
一つ目が、関係者の協働・連携促進です。それぞれの地域で、子どものために活動している団体同士が官民の垣根を超えて連携していくために、連携のための資金提供と必要な技術協力をしてきました。将来的には他の地域でも真似をしてもらえるように、まずは全国6地域の活動を応援して、連携の好事例を作ろうとしています。
もう一つは、当事者である子ども・若者の声を現場の支援と政策に反映させる取り組みです。児童養護施設で暮らした経験のある若者たちとともに、メンタルケアの拡充を求める署名活動を行い、児童養護施設を出た後も、必要とする人がメンタルケアを受けやすいように制度の改善要望を行いました。
また今後の活動に関しては、現場・地域・国の3つのレベルで活動に取り組んでいきます。
例えば、特定の地域で困り事を抱えた妊婦の支援事業や、児童養護施設などを出た若者たちの巣立ちの応援、メゾレベルでは協働・連携の促進活動、マクロレベルではアフターケアの政策提言などをしていきたいと考えています。
パネルディスカッション~それぞれの事業における活動への想い~
ここでは、かものはしプロジェクトの理事をされている篠田真貴子さんにモデレートしていただき、4人より、これまでの活動を通してそれぞれの想いなどを語っていただきました。
議論の一部をご紹介させていただきます。
<参加役員>
篠田 真貴子(かものはしプロジェクト理事、エール株式会社取締役)
本木 恵介(共同創業者)
青木 健太(かものはしプロジェクト理事長、NPO法人SALASUSU代表)
村田 早耶香(共同創業者)
清水 友美(インド事業ディレクター)
篠田:カンボジアで事業を始めてから撤退するまで、活動を通してどのような気づきを得られましたでしょうか。
青木:カンボジアでの活動を振り返り、社会は徐々に変わっていくことを感じました。
これまでの一つ一つに想いや、やってきたことが詰まっていて、またその中に社会を変えようともがき続けることの苦しみや楽しみ、喜びが、自分の人生にも意味を与えてくれました。
篠田:インド事業を通じて、現場ではどのようなものが見えてきましたでしょうか。
清水:サバイバーのリーダーシップを育成する事業のLeadership Next事業を始めてから見方が変わっていきました。サバイバーリーダーたちのアクションを見ていくと、問題を解決するために事業をつくるのではなく、サバイバーたちがリーダーシップを発揮していく、その先に問題解決が自ずとやってくるのではないかと気付きました。
篠田:日本事業に取り組んで来られた中で、気持ちを駆り立てるものは何だったのでしょうか。
村田:最初は海外で活動をしてきましたが、足元の日本でもすごく身近なところで児童虐待や児童買春が起こっている現実を目の当たりにしました。警察庁が出している事件の統計の中にも入っていない当事者の若者たちの状況を知り、この状況を何とかしないといけないと思い、2019年より日本で活動を始めました。
篠田:ここまで活動した経験から、今回ミッションを新しく変更するにあたって、尊厳という言葉を入れることになったのにはどんなことがあったのでしょうか。
本木:自分の心の中から溢れ出るエネルギーを解き放ち、それが社会のコンテクストに合ったときにとても力強い事業が生まれてくると思っています。ですが、今までのミッションに縛られて、その中でぶつかることもあったので、活動のやり方は違っても、それぞれの根っこで繋がってるものは何だろうと、そんなときに尊厳という言葉に行き着き、尊厳が満ち溢れた世界をつくれたらいいと考えました。
カンボジア、インド、日本というように、活動拠点や現状・課題は違うところがあっても、その現場に携わられている方や遠くの地から応援して関わって下さっている方、それぞれが持っているパワーを感じられたような空間でした。
▼参加者全員での集合写真
さらに、今回総会に参加してくださった参加者同士で各ブレイクアウトルームに分かれて、各々の感想や想いを共有していただきました。
こちらも一部抜粋してご紹介させていただきます。
『皆さんそれぞれ活動拠点は違うのに、うなずいて共感しているところが同じで凄いと思いました。当事者の方々の想いを真ん中に据えながら、関わる全ての人の尊厳も大切にできる社会にしたいという想いが、ストーリーとして伝わってきました。』
『かものはしの支援というのは、ここ1年2年という短い話だけではなくて、その先の人生をも変えていくような支援であるのだろうなと感じました。』
最後に
私にとって今回がはじめてのかものはし総会でした。
総会は1年に1度、昨年度の活動報告と本年度の活動計画についてお話する場ですが、特に今年はかものはし設立20年ということもあり、これまでの歩みを各事業の担当者から直接話していただくとても貴重な機会でした。
少し緊張した空間ではありましたが、一つ一つ話を聞いていくうちに、皆さん心の中から溢れ出る熱い想いが伝わってきて、力強さを感じることができました。
また、今回の総会に参加して、私自身も新たな学びを得ることができました。
私は自分のインターンとしての業務を通じて、当事者の方々の想いや声を聞き、それを社会へと届けることが大事であるということを感じてきました。これは、これまでにかものはしの各事業に関するレポート記事を見て学んだことです。
ですが、その一方で、現場ではどんなアクションが生まれているのだろうと思っていました。自分は現場にいるわけでもなく、言われていることをただ単純に伝えているだけで、何だか表面的にしか理解できていないような部分があったからです。
そのような中で、総会でのお話を聞くと、例えばインドでのLeadership Next事業では、サバイバーリーダーの方たちが、自分のやりたいことをやりたいと思い、感じ、実際に行動を起こしている現状に触れることができました。
一見そのアクションが問題解決の糸口になるのだろうかと思ってしまうことでも、それこそが本来のリーダーシップアクションの意義であり、その先に問題の解決が自ずとやってくるということを教えていただきました。
そして、改めて感じたことは、かものはしの事業を長く応援してくださっているサポーターの皆さまの支えもあって、ここまで活動を続けて来られたということでした。
これからも皆さまのお力をお借りしながら、皆さまとともにかものはしプロジェクトは歩み続けます。
日々邁進してまいりますので、引き続きかものはしプロジェクトをよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(峯)